第41話:宇佐山城ってこんなに堅城だっけ?


 1569年2月

 西近江。比叡山の麓



「殿。これにてこの城、万の大軍が来ようとも、半年は落ちますまい」


 半兵衛っち。

 色白の顔をちょっとだけ赤らめて、俺に報告する。


 縄張りしたの、半兵衛っちだからね。自慢だよね。

 でも銭は信ちゃんが出したので、もう大盤振舞いしちゃった。

 あとで怒られるか、光秀心配。


「で、あるか」


「は。元の地形に加えて、尾根に切り通しを3つ。山麓には左右への連携がつけにくいよう、縦堀りを無数に。そこを狙撃できる位置に鉄砲狭間(城の壁に穴開いているやつ)も無数に」


 これ。

 鉄砲さえあれば、無敵じゃん?

 どこ攻め上るの?

 間違っても俺、攻めたくない。

 信ちゃんに言われても攻めたくないでござる!



 ここには森可成さんが入るというけど、どう考えてもあの人が戦死する場所?

 ついでに信ちゃんの弟が戦死して、それが元で怒った信ちゃんがキレて比叡山焼き討ちしちゃったという、いわくつきの?


 そう思ってね。

 思いっきり堅城にしたの。

 だって、信ちゃんが比叡山焼き討ちを命じて実行させたのって、この俺ですから。光秀、お前が第六天魔王じゃね~か!


 だから、その芽を事前に摘んでおこうと。

 ついでにこの辺り一帯がさ、俺の領地になる予定だから。この南の坂本に城作って居城にするように命じられる予定。


 初めての城持ち大名みたいな厚遇です。これでまた一歩、サブカルルーム建設の野望に近づいた!



「しかし、ここに詰める森様の手勢には、まだ鉄砲がいきわたっておりませぬ」


 そなんです。

 まだです。

 俺んとこと、一益おじちゃん、佐々の兄貴の隊にしか配備されていません。


 現在、所有鉄砲、約4000。

 撃ち手は3000人もいない。

 1000丁以上は予備みたいなもの。

 まだ練習中。


 俺んとこ、明智機動部隊と一益隊、それに佐々隊に集中配備。

 これを野戦で使う予定。


 集中配備は俺が献策した。

 だって、空母機動部隊や装甲師団みたいに、空母や戦車を集中配備して機動的に運用する方が効率がいい。


 問題は『間に合うかどうか』なんです。

 なので現在、岐阜にて強行軍の訓練をしています、うちの隊。


 目標は、ナポレオンの近衛兵やダヴーの精鋭。

 あいつら、超人だよ。

 1日90km、2日で200km近く強行軍の後、そのまま戦場へ突っ込んでいくとか、考えられる??


 もちろんこの時代の日本の道路事情悪すぎるので、真似できないけどその半分は目指そう。


 そのうち騎馬隊にしてやるんだ。

 そうすればアウステルリッツのダヴー顔負けのことしてやれる。


 目指せ、ロンメル軍団!


 あ、補給もちゃんとしよう。

 ロンメル、後方勤務部隊に恨み買っていたよね。

 光秀、誰にも恨まれたくない。

 ひっそりと暮らしたい、臆病者です。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 1569年3月

 美濃国。岐阜



 ついに来ちゃいました。

 浅井朝倉討伐戦。


 1年早まったけどね。

 しかも外交上はとっても楽です、はい。


 六角居なくなっちゃっているし、伊勢も平定。北伊勢の一向一揆衆も経済的な紐首につけていて、サブカル浸透工作うまくいっているから大人しくしているし。


 残るはお手紙公方がへんな敵を作らなければ、平和なんだけどね。



「殿。信長様から出陣の命令が」


「朝倉攻めか?」


「はい。ついに来ました」


 半兵衛っちが興奮を抑えながら報告してくる。

 そりゃ興奮するよね。


「準備は整ったか?」


「ほぼ整いました。残るは……」


 あれだ。

 遊び人の金さん、じゃなかった。冬木さん。あいつに任せて置いた、ブービートラップ。

 あれは今回、絶対に必要だ!


「お~い。みっちゃん。持ってきたよ~。だから酒おくれ。ついでに唐揚げも、ちょ~だい」


 いじきたないセリフと共に、冬木の野郎が後方要員に大荷物を運ばせながら歩いてくる。


「おまえ、なんちゅう名前つけているんだよ。新兵器に!」


「だって、腹減っていたし。みっちゃんの説明が、この名前じゃなかった?」


 そうだな、そうだよ。たしかに同じ発音だ。


 だがわざわざかっこ悪いネーミングするなよ!


『くれ芋ぁ!』


 やめさせようとしても、シリアル番号のところにちゃっかり彫り込んである。

 俺も、こいつみたいに遊びて~><;


「早く、遊び人になりた~~~い♪」


 妖怪人間の気持ちがよくわかります。



「未完成品だから、樽に火薬詰めただけのものだからね。それに鉛弾も足りてない。だから」


「何入れたんだ?」


 きっと変な物を入れたに違いない。それが敵目掛けてぶっ飛んでいくんだろ?

 遊んでいるんだろ?


 でもな。

 使う方の身になってくれよ!?


「ちゃんと敵に被害を与えられるんだろな?」


「無理」


「え“?」


「でもさ。目くらましとびっくり効果音は凄いと思うよ」


 ま、まあ。それで十分効果があるだろう。待ち伏せ地雷だ。


 クレイモア。

 ベトナム戦争で大活躍した兵器。これ作らせたの。


 びっくりさせた敵に銃撃か、コスプレ騎馬隊を突っ込ませる。

 これから始まる金ヶ崎の退き陣できちんと殿しんがり(撤退戦で最後に残り敵を阻止する危険な役目)果たすんだ。


 どうせ俺をこき使う気満々な信ちゃんの事。

 光秀、指名されて危険な役に。

 だから新兵器たくさん用意した。目いっぱい用意した。

 怖いから。


 朝倉の精兵を寄せ付けないように、飛び道具いっぱい用意したよ。ちょっと移動が大変なくらい。使うかどうかは分からないけど。

 用意周到な光秀です。


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