第14話:墨俣十六夜城その2。光秀隊初陣(第3章終わり♪)
先程、美濃勢の物見が帰って行ってから1刻。
遠くに
「敵は斎藤利三ですな。あやつはしぶとい」
悟りの池田君がエラいことを言い出した。
『斎藤利三』
正史では光秀軍団の先鋒やっていた奴じゃん。こいつ敵にしちゃっていいの?
仕方ないよね。追い払うだけだから。勘弁してね。あとで家臣になったらちょっとだけ禄増やすから。
「中央が利三勢。右小道から日根野弘就。左から加藤光泰。お味方囲まれます!」
総勢3000というところ?
俺らの400が川と、秀吉が代表取締役社長の(株)墨俣建設工事現場を背にして、横陣を敷いている。
向こうは楽勝と思っているんだろうな。少し油断している部隊配置だ。当たり前だよね。普通に考えたら10倍の兵力差で負けるはずないじゃん。
こっちは3個小隊を各進撃路に潜ませている。1分隊12人。鉄砲1人につき4丁持たせて一斉射撃の面制圧攻撃をする。
前後左右からのクロスファイアだ。
キルゾーン攻撃を受ける史上初めての軍勢だね。どれだけ混乱させられるか。
大物見(強行偵察)を出されたら結構厳しかったよ。100人以上の大物見で一当てされたらコワイと思って、うちの鉄砲隊100人をこっちの本陣に配備したけど、舐められているな~。
強行偵察来たら本陣に300人の池田隊がいるわけだけど、激戦になっちゃうので鉄砲配置したわけ。来ないんだったら、この100人も埋伏に参加させたかったな~
お陰様で伏兵は見つからなかったからいいけど。最大限に戦力配備ができなかった射撃部隊配備だからちょっと不安。
「そろそろですかな」
「そろそろですね」
中央に見えている斎藤利三勢1200。
刈り取られた田んぼから視界が閉ざされた草むらに足を踏み入れた。半数が草むらに侵入。徐々に足音が聞こえてくる気がする。
待っているこの時間。
緊張する~。
入学試験の問題用紙が机の上に載っているのに、まだ開いちゃダメ感。
こっちは指揮すらできないから、なお悪いっす。せめて「撃ち方よぉ~い」「撃ち方はじめぃ!」とか言いたいところ。
でもそれ言っちゃ待ち伏せにならないから。よしっ!今度ハンドサインを決めておこう! なんか戦国ぽくなくってヲタクの世界。うん。絶対にやるぞっ!
ばんばんばんっ!
ばばば~ん!
ずがががーん!
急に始まる連続した射撃音。
最初の一射は狙撃だ。騎馬武者を倒すようにマニュアルを作った。その後、白煙を出して煙幕を。そしてあらかじめ測って置いた方角に面制圧一斉射撃を3射。
これで味方を撃つのを防ぐ。
その後、早合で即座に再装填。
さらに4射の一斉射撃。
あ。面制圧射撃って、あれのこと。
精密攻撃ではなくって、辺り一面に爆弾落としたり砲弾落として「どれか当たるっしょ」的な攻撃の事デス。
無駄弾が多いけど、怖いよね~。周りが
これを火縄銃でやるのです。
ホコリではなくこの時代では、一斉射撃の音と、どこから来るのかわからない射撃で周りの仲間が一斉に倒れる様を見せる事。一斉に飛んでくる矢が刺さって味方が倒れていくのも怖いけど、そこらじゅうで血飛沫立てて倒れる人を見ても怖い。
結局、鉄砲使い初めのこの時代、音が一番の武器だね。轟音に慣れていないので、馬も棹立ちになります。
一旦、射撃を中止。
戦場確認のため、煙幕の途切れるのを待つ。
さ~て、どれだけ敵は慌てただろうか?
半数位は恐慌状態ならばいいけど。
できれば逃げかえってね。それでお仕事終了。残業無し。今日はゆっくり休んでから夜中にろうそくの明かりで、明日の作戦を練っているふりして、二次元の世界へ!
「煙幕、途切れます!」
「敵は?」
「どこへ行った?」
「いない? 回り込まれたか? 周囲警戒せよ!」
池田君が悟りを解いて、急に戦国武将らしくなる。
「お待ちください! 敵のいた付近に……その……腰を抜かしたように無様な連中が……」
・・・・・・
立っている人いませ~ん。
馬は逃げました~
風で小便やおもらし臭がします。
硝煙のニオいよりも凄いとは、いったいどんだけ洩らしたんだよ?
まあ、血の臭いが少ないのはいいのか悪いのかわからないけど。とりあえず、池田勢に後始末してもらいましょう。
あ、おもらしの方じゃないよ。敵を捕縛してもらいます。うちは周囲警戒。クサいの嫌だし。
◇ ◇ ◇ ◇
あ~、月がきれい。
俺も『完全で
新月から16日目にして墨俣城完成!
人足たちが大盛り上がり。きっといっぱいご褒美を約束されているんだろうな。7日間じゃできなかったけど、すごいよ。
信ちゃんのオーダーの1か月の半分じゃん。
だけど隣に立っている秀吉の眼は暗い。夜のせいじゃなさそうだね。
すこし元気を出してもらおう。
「すごいではないか、秀吉殿。信長様の命である1カ月の半分で、あの廃城をこんなに立派な砦に改修するとは!」
池田君も悟りモードに戻って、褒め散らす。
「これで美濃攻略の糸口が出来ましたな。大手柄でござる。早速信長様へ報告じゃ。儂が守っておくから二人で報告をしてくれぬか。きっと満面の笑顔でご褒美を下さるぞ」
それでも秀吉の足取り、重いです。
何があった?
◇ ◇ ◇ ◇
「両名、でかした。これで美濃は切り取ったも同然じゃ。早速、長良川、木曽川を渡って進軍じゃ。キンカン、先導せよ!」
先鋒って、最大の功労者?
武功が足りん! もっと働けっていう事かな?
よくわからん。
「猿は後方で荷駄の差配をせよ。長帯陣にはならぬやもしれぬが、しっかと働け」
「……ははっ」
「どうした。お主の得意とするところではないか。励め」
適材適所?
いや、俺、後方で計画練っているんじゃだめ?
内政でもいいよ。人事とかならもっといい。みんなに恩をきせられるからね。
危ないとこ、やっぱやだ。
「キンカンの働きで、強力な美濃勢の主力が壊滅した。あとはまとまった軍勢は稲葉一徹のみ。稲葉山はすぐに落ちるであろう」
あ~。
そうとも取れるよね。
見ないようにしていた。見たくないから。
記憶を消したい。
利三の軍勢が、一瞬で消えた記憶を消したい!
他の軍勢も散り散りとなり、足軽は二度と戦場には立てないかも。
あの銃声の夢をずっと見続けるんだろうなぁ。
PTSD?
シェルショック?
未来の光秀軍団の先鋒がいなくなっちゃいました。
光秀もショック!
また世界初を作っちゃったよ。
こんな悪夢、早く覚めてください!
秀吉!
もっと出世しないと天下取れないじゃん。俺のために頑張れ! 君が天下を取ったらヲタク空間に閉じこもるから。手伝うからさ。
もっと勲功稼ごうよ!
◇ ◇ ◇ ◇
秀吉、頑張れーー(棒)
次は第4章、上洛しちゃう?
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「お星様くれるです。代わりにお守りあげるです」
ちなみにですが、ハードな拙作『首取り物語』では光秀、こんな感じになっていますww
https://kakuyomu.jp/works/16816700428374306619/episodes/16816927859411332424
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