第4話:魔王の圧迫面接(第1章終わり♪)


 1560年6月


 尾張国鳴海城

 首実検(取った首を確認して勲功を決める)の間



「犬! なぜ帰った!?」


 言葉少なは信長のテンプレだなぁ。利家に対してのかんしゃく爆発! 甲高い声が、この場の空気を引き裂く。


「は! 某、あの茶坊主よりも有用な存在と実証いたしたく。今後、二度と織田家を混乱させるようなことは致しませぬ。信長さまの征く手を阻む者を蹴散らすべく、帰参いたしました!」


 まあ、社内のルールを守らず、同僚を殴り飛ばしたら、そりゃクビだよね。

 いくら稼ぎ頭だと言っても、許してしまえば規律が乱れる。


「帰参を叶えるために、この犬千代。吉法師様の仇敵を成敗してまいりました!」


 いいよね。

 幼名で呼び合える仲は。

 結局、許してもらえるんでしょ?


 そのおこぼれに預かりたいな。


「犬! 貴様、勝手働きをしおったくせに、まだ言うか!」


 信長は腰かけていた床几を蹴って立ち上がった。


 うん。

 そうだね。

 ルール違反だよ。


 でもルール守ってちゃ、功名は立てられない。

 抜け駆けは武士の嗜み。源平合戦の富士川の戦いも、そのお陰で源氏は勝てたんじゃない。


 そのくらい信長は知っているだろう。

 正史と違うこの状況。

 どう転ぶか……全くわからん♪


 楽しんでみましょう。

 世の中楽しまないと。

 その位の気持ちでいないと、このあとの圧迫面接に耐えられませ~ん。



「これが親父殿の宿敵の首か……」


 ちょっと冷静になったのか、信長。

 三宝に載せてある、みっともなくないように白粉で化粧を施された生首を見下ろした。


 あれかな。

「ドクロを取り出し金色に塗り、皆で祝杯」

 とか、言わないでね。


 あれは浅井あざい朝倉の時だけで十分だから。



「丁重に保管せよ。今川から返還の使者が来るまで塩漬けにしておけ」


 あ~、たしか岡部さんが使者で来たはず。

 ちょっとよく覚えていない。

 俺の知識は主にゲームだからなぁ。ゲームに出ていないことはあいまいだ。


 えっ、信長はしかめっ面を急にほころばせた。

 イメージと違が~う!

 良い奴そうじゃん!


「帰参を許す。励め!」


「はっ! この犬千代、一層、忠勤にはげみまする」


 良かったね。利家君。

 3年も時間を短縮できて。


 だが、この信長。

 正史ではこんなにいい笑顔をするんだ。




「その者は誰じゃ」


 利家君、よろしく頼みます。

 イージーパス、よろ。


「はっ、この者が某に「ここにいては義元を取り逃がす」と教え、あの現場に案内し、共同して首級を上げ申した」


 ひぇええ。

 それ、キラーパスじゃん。

 悪い意味での!


 俺がすべて悪いことになる。

 利家~、何こっち見て「これでいいだろ」的なお気楽な顔してんだよ。

 勝手働きの罪を、一身に背負っちまった!

 やっぱり、こいつと一緒にいるのは危険かも?



「申せ!」


 あ~あ。

 元のしかめっ面に戻ったよ。

 もっと悪い。

 大魔王の顔だ。



 申せ、という事は、何を言えばいいのか?

 圧迫面接どころか、神経衰弱で信長が示したカードと同じ奴を、一発で当てよとかいう無茶な質問。



 これは普通の無難な自己紹介では通らないな。

 一応、考えてきたものはあるが、もっとインパクト持たせねば。



「はっ。某、美濃明智の住人。美濃土岐氏の末流。明智光綱が一子。

(👆じさまを父としている詐欺師。嘘つき過ぎて後には引けない奴です)

 明智十兵衛光秀でござる。

 先の長良川の戦いにて、斎藤道三さまの陣に参じた父。道三さまと枕を並べて討ち死に。幼き某は途方に暮れるも、各地を放浪しつつ『縫い針』などの行商を行い、大名家の情報を集めておりました。その際、これから武威を張るであろう大名家として、一番の有力候補が織田家と見ました。故に、仕官の機を伺っておりました」


 一気に言ったけど、ここまでは普通だね。

 この後に来るであろう質問を誘導したことが重要。


「なぜじゃ!」


 きた~♪

 この「何故」は分かる~


「はっ。信長さまに置かれては、今までの大名支配の仕組みを変えようとされていると拝察。例えば、今までの農本主義を改め、重商主義に。これにて銭収入を確保。軍制を常備軍の設立。武具を最新式のものへと置き換え、これを貸与。特にこれから主流となる種子島を大量に装備されておりまする」


 これで重商主義とか農本主義とはなんじゃ、と来るに違いない!



「貴様は何処どこの間者(スパイ)だ!」



 えええええ?

 そう来るんかいっ!

 仕方ない。こうなりゃ破れかぶれ。開き直りの術。


「滅相もございませぬ。それがし。織田家の内政、軍制、その他諸々。どのように改革すれば、信長さまのお眼鏡にかなうか、存じておりまする。この知識と手腕。

 ここで拾われるか。

 捨てられるか。

 これからの織田家にとり、どちらがよろしいかご判断を」


 ここまではなんとか筋は通った。

 あとは最後の締めだ。

 俺は片膝を突き、深々と頭を下げ、背中が見えるようにした。



「それはなんじゃ!?」



 かかった!

 背中に鉄砲担いでここに入れるよう、強引に押し通したのが最大の勝因だ!


「はっ。それがしの愛用する、種子島。鉄砲と呼んでおります。多分、普通の種子島の10倍は役に立つかと」


「見せて見よ」


 小姓にライフル銃を渡す。


 よく見ろよ。

 銃床つき。

 照星・照門つき。

 軽量化。

 青銅製カルカ。

 絡繰りを改良、引き金は軽く。

 ガードと安全装置までつけてある。


 信長よ。

 これを使ってみたくはないか。


「撃って見せよ!」


 興味津々の顔で、こちらを見返す。

 よし。

 ここがフィニッシュだ。


 城門の上に鍋が下げられた。

 距離、約40間(80m)。

 この近さなら軽いな。

 だが普通なら30間も離れれば相当な熟達者か、まぐれでもない限り当たらない。


 火薬を詰め、火口ほくちを吹き、発射準備。

 いつもの尻を突いた狙撃姿勢でなくても行ける。


 立射。


 ぐぁん!


 城内に響き渡る、銃声。

 俺の就職祝いの轟音だ。


「な、鍋の中央に大穴! その後ろの柱に深々と弾が!」


 鍋の様子を伺っていた、足軽が叫んだ。

 最後の決めは、何事もなかったような顔で振り向き、膝をつく。


「なにとぞ、仕官の儀。賢明なるご下知を」


 地面に額がくっつきそうになるくらい頭を下げ、神妙な姿で信長の声を待った。



「禄200貫文(400石)で仕えよ。仕事は……この鉄砲と言うたか。これを量産せよ。厳命じゃ」



 ……

 ん?

 このライフル銃、冬木スペシャル。

 1年に1丁しか生産できないが……量産?


 これ。

 今言ったらマズイ?



 ……ときは今 汗がしたたる 六月かな



 ◇ ◇ ◇ ◇


 次回は、遂に光秀。

 仕事始めです。


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