第6話

「ここ出たら、いよいよか…」


シャワーを浴びて身体を拭き、バスローブを着て髪を整え、藤次は鏡に映る自分を見つめる。


「アイツは美知子やない。俺のことなんとも思ってない、ただのワガママなガキや。目一杯痛い思いさせて、後悔させたれば良いんや…」


「(と、藤次さん…)」


はにかみながら自分の名を呼ぶ佐保子の顔が脳裏によぎり、藤次はキュッと、洗面台に置かれた拳を握る。


あんな顔をする女が、本当に自分に気がないとでも言うのか…


きっと彼女は、自分を…


なら…


一つの思いを心に留めて、藤次はバスルームを出る。


すると、鏡台の前で丁度仕上げの口紅を絢音に塗ってもらっていた佐保子と目が合い、思わずサッと逸らす。


「(藤次さん…)」


脳裏に聞こえるのは、美知子の声。


忘れたはずの女の面影を持った佐保子に、藤次の心臓は俄に高鳴る。


これじゃまるで、自分が佐保子に惚れてるようではないか。


頭を振り、さあできたと満足げに笑う絢音の腕を引き、ベッドに引き倒して身体に跨る。


「と、藤次?!」


瞬く絢音のバスローブを脱がし自分も脱ぎ捨て、首筋にキスを落とす。


「その気にさせてくれんにゃろ?早よ、させて…」


そうして身体を擦り合わせ、絢音の感じるところを手や口で愛撫すると、切なげな声が聞こえて来たので、藤次の情欲に火がつく。


「エエ感じや。早よ来。お前にもしたる…」


「で、でも…」


初めて見る藤次の裸と男女の絡みに、顔を真っ赤にして脚を震わせる佐保子。


すると藤次は徐に起き上がり、彼女の目の前に立つと、バスローブを一息に剥ぎ取り、肩を抱き寄せ戸惑う唇にキスをして舌を差し込む。


「ん……ん……」


「もっと舌出し…絡め難い。」


「は…い…」


舌を入れるキスなら、稔と何度もしてるのに、藤次のそれは全く違う…本物の大人のキスで、くらくらと目眩を覚えていると、ベッドに…絢音の脇に寝そべらせられ、彼女と同じように首筋に優しく唇が触れられる。


「痕はつけんようにするから、安心し…」


「で、でで…でも、欲しいです…けん、と、藤次さんのキスマーク…」


「………」


眉を顰める藤次に、絢音がしなだれ掛かる。


「なら、足にしてあげたら?靴下履けば分からないでしょ?」


「そやし…」


「お願いします…どんな感触か、知りたいんです。好きな人にされる、キスマーク…」


潤んだ瞳で懇願する佐保子に絆されたか、藤次は小さくため息をつくと、彼女のか細い脚を持ち上げ、太腿からツウッと口を這わせて、足の甲を軽く吸い上げる。


「あ!」


ビクッとしなった身体に咲いた、赤い花。


それを見つめながら、藤次はそのまま佐保子の身体に割り入り、身体を、唇を、耳を…ありとあらゆる部分を愛撫していく。


「検事…けん、じ…」


余裕がないのか、いつもの癖で、自分を検事と呼ぶ佐保子。


その声は、いつも聴き慣れた明るい声や呆れた声、罵る怒声でもなく、艶やかな女の声。


「(棗検事…)」


脳裏に浮かぶ、自分を慕い付き従ってくる佐保子の無垢な笑顔。


切なくて、苦しくて、聞きたくないとばかりに口を口で塞ぎ、ねっとり舐め回した後、冷たく耳元で囁く。


「藤次と呼べいうたやろ。萎えるわ。ドアホ。」


「で、でも…私、余裕が……あ!!」


急に絢音に胸先を舐められ、佐保子は瞬く。


「ダメよ佐保ちゃん。藤次のご機嫌損ねちゃ。折角上手くいってるんだから、言う事聞きなさい。でないと…」


そうして指先でもう一つの胸先をこねくり回しながら舐める絢音の妖しい姿に戸惑いながらも、佐保子は息も絶え絶えに、喘ぎ声混じりに、愛しい男の名を呼ぶ。


「藤次…さん…」


「エエ子や…目一杯、気持ちようさせたる。」


そうして、3人で淫らに絡み合い、睦み合い、佐保子の女の性がひらひらと花開き、シーツを濡らし始める。


それを見計らい、藤次は下腹部に舌を這わせ、佐保子の蜜を舐めとるように花に口付ける。


「あっ!やっ!」


「…大丈夫。怖くないから…力抜いて…」


「奥様……あ!!」


そうして絢音の胸元に縋りながら、藤次に脚を開かれ花を舐められ中を舌で犯され、肉芽を刺激され、佐保子の意識は徐々に絶頂に向かう。


徐々に混濁していく理性の中、佐保子はずっと、心に決めていた己との約束を破る決意をする。


「…です…」


「佐保ちゃん?」


瞬く絢音に構わず、佐保子は絶頂の波に任せて言葉を…想いを吐き出す。


「藤次さん!…好きです!!!」


「!!?」


溢れる蜜と涙と、濡れた唇を押さえて泣いていると、藤次は口の端についた佐保子の蜜を舌で舐め取りながら、無表情で彼女を見下げる。


「と、藤次さ」


「今のは、聞かんかったことにする。これだけ解せば、もう痛ないやろ。挿れるさかい、力抜き。」


「えっ?!」


「と、藤次?!」


瞬く2人に構わず、藤次はクッと、佐保子の膣に自らを沈め、初めての血と涙が、真っ新なシーツを濡らした。







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