第3話 はじめての冒険
wtjmy7
「次は、そうね。もう少し、森の奥へ進んで行ってみて。
聖剣の魔力で、少し強い魔物を引き寄せてみるわ。」
「ちょ、ちょっと、勝手なことしないでよ!!」
私はシフに言う。
「折角だわ。ここでもっと強くなりましょう。
そして、あなたには自信をつけてもらうわ。
ここでの一歩は、距離だけをみれば
非常に小さな一歩に見えるかもしれない。
でも、あなたは間違いなく、聖剣の守護騎士になるための大きな第一歩を歩みはじめたの。」
シフの言葉は、私を勇気づけた。
私は強くなれるかもしれない。
私が、聖剣の騎士になれるかもしれないのだ。
私はシフの言うとおり、森の中へと進んで行った。
森の奥深くに進んでいくと、少し離れた場所に、岩石のような鉱物に包まれた、人型の魔物、ゴーレムが現れた。
「来たわよ。」
普通こんなハイレベルな魔物は、こんな森の中には出現しない。
おそらく、聖剣の魔法によって近くのダンジョンから引き寄せられたのだろう。
私は聖剣を構えると、ファイアエアロソードを発現させた。
そして、剣撃を放ちファイアエアロ・ウェーブ、つまり炎の風を発射する。
シュボボボァァアアア
ファイアエアロが命中し、炎が燃え盛るが、ゴーレムには燃えうつらない。
「ファイアエアロ・ウェーブは離れた敵を攻撃するのには有効だけど、破壊力は弱いのよ。」
シフが解説する。
私はエアロを解除すると、通常の炎の剣、ファイアソードでゴーレムに直接斬りつける。
キィーン
ファイアソードはゴーレムの岩石でできた硬い体に弾かれる。
炎も燃えうつらずにすぐに消えてしまう。
ゴーレムにはダメージを与えられない。
ゴーレムの体は岩石でできているので、不燃性なのだ。
ゴーレムが拳を振り上げた。
「キャッ」
私は避けようとするが、間に合わず、ゴーレムのパンチを喰らってしまったー
かに見えたが。
突然、目の前に半透明の光の障壁が現れる。
そして、その障壁を殴ったゴーレムが反対に弾き返され、吹き飛んでいく。
「聖剣の自動防御システムよ。
魔法の盾を作り出すの。
回数制限(だいたい2、3回くらいまで )があるから、気をつけて。」
シフが言った。
このシステムはかなり助かる。
命拾いしたけど、でも、あの鉱物の体の魔物を、今の私では倒すことはできない。
「さあ、続けて、1回目で上手くいかなかったからって、落ち込まない。」
「でも、私ではあの魔物にはダメージを与えられない。」
「すぐに諦めないで、考えるのよ。
あなたには、精霊魔法剣があるでしょう。」
精霊魔法剣ー
シフに言われて、私はもう1度ステータス表示を確認する。
そして、現在使用できる精霊魔法をもう1度読み上げる。
ゴーレムの硬い体は、剣で斬りつけても簡単に弾き返されてしまう。
そして、弾かれるので炎の威力も半減する。
不燃性なので、炎の魔法が燃えうつらない。
どうすればいいのか?
私は雷の魔法剣、サンダーソードを発現させる。
聖剣から、サンダーソードの電撃が溢れ出す。
私は接近するゴーレムにサンダーソードの聖剣で斬りつける。
聖剣はやはり弾かれたが、
瞬間ゴーレムの体に電撃が流れ込む。
バチィィイイイ
ゴーレムの体が痙攣する。
そして、さらに、2発目、3発目のサンダーソードの剣撃を放つ。
サンダーソードの電撃はゴーレムの岩石の内部へと流れ込み、ゴーレムにダメージを与えている。
しかしー
ゴーレムが再びパンチを撃ってきた。
1発目はかわしたが、2発目は当てられてしまった。
自動防御システムのおかげで、魔法の盾が発動する。
ゴーレムの体が弾かれて、ゴーレムが後しろに下がる。
魔法の盾のおかげでダメージは受けなかったが、自動防御システムが発動するのはあと1回だけ、それ以降は私もダメージを受けてしまう。
だが、防御力の高いゴーレムは、剣で斬る事ができないため、ダメージを与えにくい。
また、体が大きいため、生命力も高い。
あと10発ほど、サンダーソードを叩きこめれば倒せるだろうけど、その前にゴーレムのパンチでこちらが殺られてしまう。
どうする。
「 セリーナ、通常攻撃で駄目なら、合成精霊魔法剣を使うのよ。」
合成精霊魔法剣ー
シフのアドバイスで、私はある発想を思いついた。
私は、現在使ってるサンダーソードの上から、氷の魔法アイスリンクを合成させる。
電撃の流れるサンダーソードから、さらに冷気が溢れ出し、合成魔法アイス・サンダーソードが完成する。
そして、襲いかかってくるゴーレムに斬りつける。
電撃がゴーレムの巨体に流れ込む。
それと同時に、アイスソードの冷気がゴーレムを凍りつかせる。
凍りついたゴーレムは、動けなくなる。
さらに私は、反撃できないゴーレムに連続して剣撃を放ち続けた。
ゴーレムの体は氷に覆われ、さらにその上から電撃が流れ込んでいく。
最後にゴーレムは完全に動きを止め、赤い瞳の輝きを消してその場に倒れる。
私は耐久力のあるゴーレムを凍りつかせて、動きをとめることで反撃を封じ込め、その間に連続して剣撃を放ち電撃を何回も流し込んだ。
「やるわね、セリーナ。
あなた、飲み込みがいいわ。
強さと能力はクソナメクジ以下だけど、それを補う知恵と勇気がある。
その2つとこの聖剣の、合成精霊魔法を組み合わせれば、あなたは戦えるわ。」
シフの私への評価が、クソナメクジからクソナメクジ以下になった。
褒められているのか、貶されているのか、よくわからない。
私は1日、聖剣を使って10匹以上の魔物を倒したあと、冒険者養成学校の寮に戻った。
生まれてはじめて、冒険をしたといってもいいだろう。
そう、私はもう、冒険の魅力に取り憑かれつつあった。
いまは、真夜中の就寝前である。
シフはどこかに隠し持っていたのか?パジャマに着替えて、髪をとかしている。
「あなた、たった1日であそこまで聖剣と合成魔法剣の使用方法を理解できるなんて、なかなかセンスがいいわ。
さすがに頭がいいのね。」
「えっ?」
「だってあなた、エルフとのハーフでしょ。だから精霊とも交信できるのね。
明日は、さっそくだけど、ダンジョンに挑戦しましょう。
聖剣以外の魔法具とポーションなどのアイテム、それから、使える魔法ももっと増やしておきたいわ。」
「でも、さすがにダンジョン攻略は速すぎると思うわ。」
「そうかしら?でも、あまりゆっくりはしていられないの。
いつ魔王軍の誰かに発見されるかわからないし。」
「だけど私は。」
「さあ、明日もよろしくお願いね!!」
そう言って、シフは空いているベッドに潜り込んで眠ってしまう。
聖剣との本契約をするかどうか、まだ決めた訳ではない。
そう言おうとしたのに。
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