第2話 合成精霊魔法剣

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  12歳の誕生日に、お姉ちゃんはこの空のように青いペンダントと、ペット用のプチスライムを買ってくれた。

    私は感激した。

 お姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんに憧れる私は、私もお姉ちゃんのように冒険者になりたいと言った。

    お姉ちゃんは、セリーナならなれるよ。とひと言だけ言って、私の頭を撫ぜてくれた。

  チュンチュンチュン

  小鳥の鳴き声が聞こえる。

  朝、優しい陽射しとともに私は夢から醒めた。

   周りを見渡すと、いつものように寮の一室で、カーテンと窓がついている。

  そして、お姉ちゃんが買ってくれた例のスライムがスヤスヤと床で眠っている。

   スライムとはいつも最初は一緒にベッドの中で眠るのだけど、寝てる間にいつの間にか何処かに行ってしまう。

   夢遊病の性質があるのかもしれない。

    そう、いつもと何も限らない。

  お姉ちゃんとの思い出と同じように、私はきっと、夢を見たのだ。

   あの聖剣も剣精霊も、きっと幻なんだ。

  「 おはよう!!セリーナ。

 よく眠れた。朝よ!!」

  フライパンを持った剣精霊がキッチンのある部屋から現れた。

   私はベッドから落っこちた。

  

 「頂きます。」

  剣精霊が両手を合わせて言った。

  私は剣精霊とテーブルで向かいあって座っている。テーブルの上には皿の上に盛り付けてある料理が並んでいる。

   剣精霊がムシャムシャとフォークとナイフを使って食べている。

   「あなた、精霊なのにどうして食事がとれるのよ。

  料理も作れるし。」

  「じっしゃいかしてりゅのよ。

  いちびてきにれ。」

   剣精霊が口の中いっぱいに食事を詰め込んで言った。

  実体化してるのよ。

一時的にね。

  どうやら剣精霊はそう言いたかったようだ。

   「あ、あと、私の名前はシフォーレ、シフと呼んで。やっぱり契約してもらったらずっと一緒にいるんだもの。

  あなたじゃ他人行儀だわ。」

  「ま、まだあなたとは契約するとは決まった訳じゃないわ。」

  「だ・か・ら・シ・フ。 それから、卵焼きとか食べないの。

  さっきからサラダばかり食べているけど。

   もっと色んな物を食べてないと、成長できないわよ。」 

  シフがこちらにナイフを向けて、私の胸をジロジロ見ながら言った。シフはスレンダーだがそれなりに出ている。

私はー 私は少しイラッときた。

  「わ、私はサラダの方が好きなんです!!」

  私はそう言って、トマトにフォークを突き刺した。

    

    森の中で、私はレッドスライムに対して剣を斬りつける。

   レッドスライムの柔らかくて弾力のある肉質は、剣を受け止めて、何度斬りつけても弾き返してしまう。

   ピーピー

    同類を剣で斬りつけている私を、プチスライムは飛び跳ねながら応援してくれていた。

  ペット用のプチスライムは同類よりもエサをくれる飼い主を応援してくれるのだ。

    そうしているうちに、スライムは口から謎の粘液をはいた。

   私は吹き飛び、ひっくり返る。

   「あちゃー、うすうす弱っちいとは思っていたけど、想像以上だわね。

   あっちがスライムだとしたら、あなたはまさにクソナメクジだわね。

  アハハハはっ」

   シフが私を笑い飛ばすと、遠慮なく毒舌を吐く。  

   そのクソナメクジに世界を救えとか、よく言えたもんだな。

   私は剣を地面に突き刺して立ち上がろうとする。

  粘液で上手く身体が動かない。

  「ねえ、少し提案があるんだけど。」

  「今度は何!?」

  私は振り返り、ギロリとシフを睨みつける。

  何かもうこいつにはさっきからイラついて怒りも臨界点に到達しつつあった。

  「おお怖、何そんなに怒ってんのよ。

  いいかしら、提案っていうのは、私と仮契約をしないってことよ。」

   「仮契約!?」

  「そう、仮契約っていうのは、永久持続契約ではなく、一時的に単発で契約するってこと。

   そうね、今日から1週間だけ。

  本契約と違って、使える魔法も限られてるけど、うふふっ、今よりは全然だいぶマシになるわ。」

    「笑わないで!!」

  シフの提案に、私は少し考え込む。

  そうだ、コイツのことはイマイチ信頼できないが、これは確かに悪い提案ではないのかもしれない。

   少し試し斬りしてみてから、聖剣と本契約するか考えてみてもいいかもしれない。

   今週ある実技試験もこれでなんとか突破できて、進級できるかもしれないし。

  「 わかったわ。1週間だけね。

  私がそう答えると、決まりね。」

  そう言って、シフは呪文を唱えた。

 私の身体が光り輝き、胸元に光の粒子が集まる。

   そして、聖剣が実体化していく。

   聖剣は宙に浮かび上がり、私はそれを両手で掴んだ。  

   「OK 仮契約終了。」

   聖剣から、魔力が私の体の中に流れ込んでくる。

  体から力がみなぎってくる。

「聖剣を持つものは、その聖剣の魔力を得られるの。

   そして、パワーやスピードなどの、様々なステータスが大幅に向上するわ。」

   シフの言うとおり、何だか体が軽くなった気かした。

     「それじゃあ早速だけど、試しにこの中の精霊魔法からどれかを選んで、そうね、炎の精霊魔法、ファイアー・リンク ・ソードでも選んで頂戴。」   

   シフがそう言うと、目の前の空間に謎の文字と図形が浮かび上がる。

 「この、目の前の謎の文字は何?」

    「精霊魔法剣の固有魔法の1つ、ステータス表示よ。

   あなたの心の中に直接魔法を流し込み、文字や図形などの情報を映し出しているの」

   意味がさっぱりわからないが、気にしたら負けだ。

  「読んでみて」

シフに言われて、私はそのステータス表示を読んでみる。

  炎と水、風と土など、8つの属性精霊の文字と図形が薄青く光るインクで書いてあった。

  凄い、仮契約なのに8つも。

  普通精霊契約できる属性魔法は、1つか2つだけ、多くて3つ程度。

  それなのに、初心者の私がいきなり4つも。

   本契約をすると、この何倍もの数の属性魔法が使えるわよ。

   驚く私に対して、シフはさらに補足する。


  心の声で、選択できるわ。

  そう言われて、私は炎の精霊を選ぶ、するとそこからさらに新しい画面が出現し、

ファイアー・リンクという文字が出現した。

  私はファイアー・リンクと唱える。

  すると聖剣が精霊魔法の魔力を帯びて、薄っすらと光輝く。

  そして、聖剣が淡い炎につつまれた。

  試しに斬ってみて?

  私は剣を構えると、駆け出してスライムに斬りつける。

   聖剣がスライムに食い込むと、ファイアー・ソードの精霊魔法はスライムに流れ込み、スライムを炎で包む。

   凄い、一撃で。

   しかも、斬れてもいないのに炎の魔法の威力だけでスライムを燃やした。

     

 「どう、これが聖剣の力よ。

そして、それは聖剣の資格を持つあなただからできたの。」

  「 シフ」

  私は強くなれた。今までで、あんなに努力してもなかなか成長できなかったのに。

   「それじゃあ今度は、あそこにいる蝶々のモンスターを攻撃して頂戴。」

  シフが指差す方向には、空中を舞う巨大な蝶々の魔物、ライトバタフライが飛んでいた。

  だが、空中を飛んでいるので、剣が届かない。

   「大丈夫よ。この、炎の精霊魔法剣、ファイアーリンクソードの上から、風の精霊魔法、エアロリンクをかけてみて。」

 「えっ? でも、風の魔法を使うためには、火の精霊との交信を解除しなければならない。

   火の精霊との交信を解除したら、炎の魔法は使えなくなってしてしまう。」

 基本、精霊魔法は、1度に1つの種類しか使えない。

   「それも大丈夫よ。聖剣は、2種類の精霊魔法を同時に重ねがけする事ができるの。

    聖剣は特殊な素材の金属、オリハルコンが合成されていて、1度精霊魔法を付与すると一定時間剣の中を流れ続けるの。

   そこに、もう1つの別の魔法をかければ、重ねがけする事ができる。」


  シフの言うとおり、私はエアロを詠唱した。

   火の魔法が付与されている聖剣の上から、風の精霊魔法エアロが重ねがけされる。

   ファイアリンクの炎をまとった聖剣の上から、エアロの風が流れ込み、聖剣の周囲で炎が回転をはじめる。

  「オーケー 次は、その炎の風魔法、ファイアーリンクエアロを、あの蝶々、ライトバタフライに発射してみて頂戴。」

   私が願うと、目の前に、ファイアーエアロを発射する方法、ファイアーエアロ・ウェーブの発動方法が出現した。

   私はそこに書かれた通りに、離れた空中を飛んでいるバタフライにめがけて剣撃を放つ。

    風に流れる炎の塊が発射され、空中を舞うバタフライに命中する。

    炎が爆発し、バタフライがダメージを受けて落下する。

    まさか、私がこんなハイレベルな技を使えるなんて!!

  「どう、これが合成精霊魔法、ファイアーエアロよ。

  ほかにも、様々な精霊魔法の組み合わせがあるわ。」

     シフが静かに興奮する私に、ドヤ顔でいった。

     

   

   



     

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