第9話 ギルド加入 ①

 嫌な記憶のストレスを発散させるため、連射が一番だと知りました。

 もう1ヵ所の墓地を見つけ、これでもかと撃ちまくり。


 おかげでなんと、200個を超える魔石が集まりましたよ。


「手数料を引かれても36万円かよ。笑いが止まんねーーーーー!」


 狭い範囲で湧いてくれたのが良かったな。

 あとで結衣に報告しておけば、これを参考にして、明日からの狩り場を考えてくれるはず。


 だが、飽きてきた。


 贅沢な悩みだろうけど、うん、飽きたんだよね。

 幽霊って知能が低いのか、パターンが単調なんだよね。

 集団なんだから、連携とか取ってくれたらやり甲斐があるのにさ。


 直線的に襲ってきては、バンと撃たれてヒョーイと消えていく。そのバン、ヒョーイの繰り返しだよ。

 お化け屋敷の人の方が、よっぽどプロフェッショナルの本物だ。


「もうボスを倒して終わりかな」


 その居場所のメドはついている。

 このフィールドのどこからでも見える、あの一番大きな屋敷だろう。


 道すがらのお化けをなぎ倒し、屋敷の門を蹴破る。


「ちわーっ、お邪魔しますよー」


 領主の屋形っぽくて、中にはメイドや使用人の幽霊がワンサカいる。

 それらをサクッと片付けて、一番奥の部屋へまっしぐら。


 中は40mはある細長い部屋で、その奥にポツンとひとり。

 ガンマン風の幽霊が立っていた。

 ガンベルトにある銃を、指で叩いて笑っている。


「こ、こいつ強い……ぞ」


 本能でわかる強者のオーラ。


 自分が遠距離攻撃であることをアピールし、優位である事を見せてくる。


 俺たちの間は距離にして25m。

 近距離攻撃をする者にとって、絶望的な距離だ。

 それが分かっているのだろう。

 魔法使いを表す杖すら手にしていない俺の事を、ガンマンは全く警戒していない。


 手をダラリとおろしていて、幽霊の酒を楽しんでいやがる。

 それに早撃ちに自信があるみたいで、エア早撃ちをしてはガハハハと煽ってくるんだ。


「なんだ、コレ」


 どこのボスも自意識過剰だなあ。

 自分が負けるとは一切考えていない。


 だけどあの早撃ちはあなどれない。

 まともにやり合うのは危険だな。


 俺はゆ~っくりと手を前に伸ばし、3本の指を握りこむ。

 からの手をガンマンは鼻で笑い、撃ってみろよと挑発してくる。


 俺はそのまま笑顔を保ち、肩をすくめる。


「バン、バン、バン!」


『ぐわっ!』


 ガンマンの腹と心臓にヒット、ゆっくり前のめりで倒れて終わった。


「ふぅ、緊張したーーーーーっ」


 自分と同じタイプの敵は初めてだ。

 怖くて不意打ちをしたけど、相手に合わす必要はないよ。


 それに宝箱も出てくれたし、結果オーライだもん。


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『早撃ちのガンベルト』


 敏捷+50、MP自然回復を1分間につきMP1を追加回復。

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「すげー機能。……えっ、さっきの敵ってこれ装備していたよな? それずるくない?」


 ということは普通に対戦していたら、負ける要素がいっぱいだったわ、あっぶねえ。

 ナイス危機管理だよ、俺。


「でもダンジョン産の装備かあ。目立つよなあ? それこそ有名人になっちゃうかもよ」





 ガンベルトを腰につけ、意気揚々と協会へと戻った。


「たっだいまー」


「番場ハンター、今日も大漁ですか?」


「まーねー♪」


 この受け付け嬢さんとも打ち解けてきた。

 こんな些細な事だけど、なんだかハンターらしくなってきたよ。

 換金してもらいその幸せを噛みしめる。


「あれ、君はあの時の!」


 いい匂いと共に、涼しげな声が後ろからした。

 うるわしい思い出がフラッシュバック。

 脳内麻薬が分泌されるのを感じるよ。


「お久しぶりです、エミリさん!」


 うおー、ついているよ。すげー稼げてその上に目の保養までてきちゃったよ。

 一日を締めるにはふさわしいな。

 このあいだの妄想恋愛の続きをやっちゃおうかな。


「良かったわ、ハンターを続けていたんだね。あれからずっと探していたんだよ」


「はい、成長してめっちゃ調子いいです(キリッ)。でも、俺に何か用事でしたか?」


 ダメだ、エミリさんが話しかけてくれているのに、他ごとをしていたらバチが当たるぞ。

 一言だって聞き逃さないよう、全力集中であたります。


「この前さ、言いそびれたんだけど、もし良かったらウチのギルドに入らない?」


「へっ?」


 天使の言葉で時が止まった。


 辺りから音が消え、周りのモブもさがっていき、花が咲き乱れる2人だけの世界になった。


 嘘だろ、あの白銀霊のギルドマスター、エミリさんから直々のお誘い?


 あんな出会い方だったのに、それでも俺を誘うって事は理由は1つしかないよな。


 俺に惚れたんだ、キャーーーーーーー。


 ど、どどどど、どうする?

 いや、もちろんOKさ。


 でも受け方はスマートにしないと、エミリさんに恥をかかせてしまう。

 だってあの瞳、ただ事じゃないぞ。完全に俺にイッてるよ。


 サラッと格好よく返事をしてあげないと。

 よ、よし。きめるぜ。


「も、も、もも、も、もち、も、もちもー」


 髪をかきあげてキメたのに、肝心のセリフが出てこない。


「ももも、もち、もち、もももちちちち」


 がんばれ、俺。

 彼女いない歴に終止符を打つんだ。


 それさえ言えれば、ばら色の人生がスタートするんだぞ。


「ちょっとエミリさん、本気でその人を入れる気ですか?」


「んんんん?」


 俺を指差してくるのは、ピンクヘアの猫耳つけたちびっこ美少女。

 それがすごい形相をしているんだけども、俺の青春を邪魔しないでおくれよ。


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 番場 秀太

 レベル:12

 HP :135/135

 МP :195/255

 スキル:バン・マンVer2


 〈攻撃威力:200〉


 筋 力:20

 耐 久:30

 敏 捷:30(+50)

 魔 力:60


 装 備:早撃ちのガンベルト

 ステータスポイント:0


 所持金 396,500円

 借 金 9,950,000円(▲50,000円)


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