第12話 貴族依頼 護衛2回目
🖼 貴族依頼 護衛2回目
まえがき
<<近況ノート210 に、オルコット伯爵領から、王都まで、主だった貴族の領地の位置を示した地図を掲載しています。手書きで、見にくいかな?
>>
今回の訪問予定は、王都の北部から東部の5貴族領だ。
ノスト辺境伯、イスト男爵、ハーバ侯爵、ベルン男爵、ボーダ公爵の5貴族領。
オルコット領の東門から出て、まっすぐ北へ、ノスト辺境伯領へ向かう。
最初こそ馬に慣れなくて苦労したが、少しして、なんとも無くなってきて、安定した走りができるようになっていた。先日の馬が良かったが、あいつ、結構な老体らしくて、長旅は駄目ということで、若い馬に変えられての出発だったからね。
なんとか馬とも「念話」ができて、乗せてもらっているよ、若い?うん、確かに、動きがキビキビしていて、筋肉が踊っているよ、こいつ。きっと、外へ出るのが楽しいんだな。
念話「そりゃあ、楽しいよ、練習場をグルグル回ったって楽しく無いじゃん?」って、あれ、僕の思いが伝わってる? 以心伝心? 返事がないから、思いだけでは伝わっていないよな?・・きっと。
ノスト辺境伯領へは、案外早く着いたよ、2時間くらいかな? サッサと済ませて、今夜は次のイスト男爵領の予定だ。
セリーヌは着替えるでもなくそのままの騎乗服のままで、ノスト辺境伯に迎えられて屋敷に入って行く、僕は少し後ろを歩いているけどね、「気配察知」は常時発動させているし。
とりあえず、この屋敷内には、悪意や敵意は無いようだ。
セリーヌも、結構くだけた表情で、辺境伯と話しているな、いろいろ情報交換などしているのだろう。僕は僕で、執事さんとの会話中。いろいろ話してくれるよ、領内の治安、防犯、農作物の出来具合、そんな中で、ベルン男爵が・・とか言っていたな。
「並列思考」で、意識をベルン男爵に飛ばして見てみる。
山地の東の切り通しを管理している男爵だよ。
うん?談話室にいろいろ、他の貴族も集まっているな、どれどれ、何か書類にサインをしているが、あれは、何かの連判状? それと、地図を出しているけど、切り通しのあたりに印が4箇所付けてあるな、で、中心にはセリーヌって名前。何?これ、セリーヌを襲撃する相談しているのか?関わっているのは、ベルン男爵、エリング男爵、カーマ男爵、カナル男爵、いずれも、山脈に沿ったところに領地のある男爵たちだ。
少し席をはずしてトイレに行く。
「カナデ、居るか?」「はい」「少し相談がある」「はい」
「この先、ベルン男爵のところに動きがある、どうやら切り通しで、セリーヌを襲う計画があるようだ、まだ2日くらいあるけど、調べられるか? それとも、先に潰すか?」
「って、また、無茶なことを・・・ちょっと行ってきますよ」って消えていったな。
なごやかな歓談も終わって、先を急いでもいいけど、どうしようか?と思っているところに、辺境伯から、今日は、ここに泊まっていけ、っていう申し出。
それに、セリーヌも同意したので、ラッキーだね、これで、いろいろ準備する時間も出来たよ。
僕は、幸いにも平民なので、貴族様との食事は免除してもらって、執事さんや使用人さんたちと一緒の食事だ、気楽で良い。
でも、部屋だけは、小さいけど、個室を与えられたので、これまたラッキー。
さて、いろいろ探ってみようか。
まず、カナデ、うん、一旦、オルコット伯爵に連絡にいったな、報連相、大事だからね。
明日、伺う予定の、イスト男爵、ここには、少し悪意がある、これは、夫人か、面倒だな。何か、悪事の証拠は? 夫人の寝室、枕元に書類、どうやら、セリーヌへの嫌がらせの依頼だよ。差出人は、ベルン男爵。これで、まず一つ。書類は一応複製しておく。処理は明日その現場で、かな?
ハーバ侯爵、可もなく不可もなし、良くも悪くもなし、ってところだね、まあ、侯爵だし、メンツもあるか? ただ、悪事には染まらない傾向のようだから、丁寧に接していけばよさそう。
同じ侯爵でも、今回の予定には無いけど、キース侯爵が次に近い。
キース侯爵は、オルコット伯爵に過去、助けられた恩があって、まあ言うことは聞いてくれそうだけど、こういう人こそ、うまくやっておいたほうが良いね、セリーヌに訪問するよう進言しよう。いつまでも、過去の恩が続くって思ってはいないだろうけど、何で?ここを外したのかな?
問題なさそうだけど、・・・そうか、費用か? 出させたく無い? ここ、貧乏なのか?
じゃあ、僕の「収納」から、オーク肉でも提供しようかな?
次のベルン男爵は、駄目。「黒」決定だし。
最後の、ボーダ公爵、まあここは、表敬訪問だね。公爵だし。伯爵に協力的だから、ちゃんとしとけばOKだよな。
部屋で、少し休んでいる、と、カナデが帰ってきたようだ。
「おかえり」
「って、何でわかるの? 」
「まあ、良いじゃないか」、って、適当に返事をすると、カナデが姿を現した。
「時間がもったいないし、結論から言うよ、」って話されたのは、
カナデは、しばらく僕の指示に従うこと、ヒロシは、思うがままに進めてよいこと、
セリーヌを守って欲しいこと、・・ということなので、
「では、カナデさんに指示を出します、セリーヌさんを守り抜いて下さい。」
「えっ、それだけ?」
そうだけど・・・あとは、まあ、僕の好きにさせてもらうよ。
時々、セリーヌから僕が離れる時もあるから、そんなときは、カナデの出番だ、必ずセリーヌを守ってくれ。
あと、予定変更で、ハーバ公爵のあとに、急な変更だけど、キース侯爵を訪ねよう。あまり時間は取れないが、ご挨拶に伺うって先触れを出しておくように指示した。
実際は、僕が、獲れたてのオーク肉を提供するから、焼肉パーティなんかどうですか?ってね。これで、カナル領を通らないで、切り通しへ行ける。
さて、明日の準備だ・・・もう面倒だから、今夜実行する。
イスト男爵邸の居間に、「白霧」を発生させ、その中に、「白状」をかけた男爵夫人を、ベルン男爵の指示書とともに、「転送」する。
さあ、これで、イスト男爵は、どうするのかな?
次に、カナル男爵の方は、既に、傭兵を雇って用意してるな、カナル領を通るあたりで、襲わせる? まあ、その道は通らないけどね、でも、面倒なので、先に潰しておこう。
雇われた傭兵たちがカナル領の近くの街道に潜んでいるので、まとめて「光刃」で意識を狩って、武器、金品を回収、まとめて、例の墓場だったあたりへ「転送」しておく。
前金かな?結構貰っていたんだな、全部で、金貨50枚。
*カナル傭兵より 金貨50枚
カーマ男爵も、傭兵を雇っているな、既に傭兵たちは、切り通し近くの山中に籠もっているので、これも、まとめて、「光刃」で意識を狩って、武器、金品を没収の上、墓地近くに「転送」。
*カーマ傭兵より 金貨80枚
エリング男爵のところの傭兵たちは、既に、ベルン側の山中に籠もっている。
これも同じく、意識を狩って、武器、金品を没収、墓地近くに「転送」。
*エリング傭兵より 金貨100枚
ベルン男爵のところは、まだ、領内、屋敷内にいるから、後回しだ。
墓地に「転送」した連中、23人、とりあえず、再度、「光刃」を上書きしてから、「蔓束縛」で一人ずつ縛り上げておく、まあ、2日くらいは目覚めないだろうけどね。
翌日の午前中には、イスト男爵屋敷に到着。と同時に、イスト男爵が出てきて、セリーヌに跪いて、何やら謝っているのかな? まあ、知ってるけどね。離れて見ていたが、セリーヌに呼ばれて寄って行って、耳のそばで、小声で、「昨夜少し、仕置きをしておきました」ってね。まあ、その後は、いろいろあれやこれや、接待をしてくれようとしてくるので、「先を急ぎませんか」って進言して、1時間くらいで、出立したよ。
「詳しくは、オルコット伯爵に・・」ってことで。
ハーバ侯爵家では、丁寧に挨拶をして、訪問の記念ですって、僕が、オークを1体出してあげたよ。早速、屋敷から料理長なんかが出てきて、もう大騒ぎですね、解体は? 「出来ます」って誰かが言っているし、みんなで、ワイワイガヤガヤ、ま、こういう訪問の仕方も良いのでは?
用意されていた、昼食を頂いて、お茶して会談して、セリーヌも楽しそうでよかったし、何より、侯爵の顔が緩みっぱなしだよ。
それで、打ち合わせ通り、次は、近くのキース侯爵を尋ねる。先触れは出してあるしね。
屋敷は、確かに、貴族のキラキラ感が弱いかな?
侯爵で立場は上なのに、それはそれは丁寧に出迎えてくれたよ。
セリーヌに侯爵と会談をしていてもらっている間に、僕は、執事さんに挨拶をして、今朝、獲れたてのオークがあるんだけど、これ、差し上げます、「エッ、ありがとうございます」って案外素直に受け取ってもらえたので、「夕食は、焼肉パーティなんかどうですか?」「良いですね、ご用意します」っていうから、まあ、手伝いましょう。
「解体」、肉のブロック作りをして、保存は?って聞いたら、「あります」って言うから、保存用のマジックバッグを持ってきてもらって、そこへどんどん、ブロック肉を入れていく、料理長も顔負けのナイフ捌きだよ。
そんなことをしていたら、セリーヌと侯爵が出てきて、執事や料理長から話を聞いている。
まあ、勝手なことをしてすみませんね〜、ってセリーヌが打ち合わせ通り振る舞ってくれてよかったよ。侯爵も、硬い表情が少し和らいだかな?
騎士団の人も来て解体を手伝っているので、もう、大盤振る舞い、しようか。
で、出したのは、ワイバーンだよ、まるまる一頭、肉も素材も、取り放題だ。
って、執事さんと騎士さんたちに言ったら、みんなで、ワイバーンに群がって、解体ショーが始まってしまった。あとで、ここの地面、きれいにしておこう・・・
そんなこんなしていたら、ゾロゾロと、冒険者風なのが4人、これ、ここ、キース侯爵領の冒険者ギルド長一行だよ、早速、解体に参加して、肉と素材が目当てですか? 僕は良いけどね〜
もう、ついでだよ、オーク一体、追加で・・・
結局、夕食は、他にも冒険者が集まってきて、無礼講みたいな状態で、大盛りあがり、侯爵もいい顔できたしね、この場に、悪意、敵意持ちが居なかったのは、幸いだったよ。
ギルド長に、あんたがヒロシさんか?って挨拶されたけど、名前を聞くのを忘れてしまったな。
翌朝、さあ、いよいよ、切り通しを通る。
半分以上は既に潰してあるので、あとはベルン男爵の手勢だけだけどね。
早速僕も今日の仕事をしよう。
まず、墓地に「転送」しておいた連中から、適当に、23人から5人選んで、「白状」をかける、王都の東門前に、白霧とともに、23人全員を転送する。
さて、そこまで情報があっても動かない、あるいは逃げる連中がいるはずだよ。これは見逃さないよ。王都、行政官庁とお城を「空間察知」で捉えておく。どんな動きがあるかな?
さて、僕とセリーヌが切り通しにさしかかる、が、攻撃は一切無い、なぜ?ってそんな顔で見ているのが、潜んでいるベルン男爵の手のもの達。
切り通しを抜け出る辺りで、火炎魔法が飛んできた、合わせて、矢が飛んでくる。
セリーヌを下げて、前に出て、「結界」。すべての矢と火炎魔法が収まったところに、一団が突っ込んできたよ。ベルン男爵も、最後尾に居る。
まあ何だ? 面倒なので、「加重」強めで。武器、金属、金品を全回収する。
この男爵、良いものを持っていたよ、さっき、何か操作しようとしていたのって、これか?
*転移の腕輪 設定して5箇所へ転移できる、って、使用制限があるけどね、「複製」、「改変」、でなんとかなるんじゃないか?
あとは、箱に入った金貨が、5000枚って、ここで、勝利に浮かれながら、報酬を配るつもりだったのか? いや、見せ金か? お粗末。
とりあえず、全員、「光刃」で意識を狩って、男爵と、あと数人に「白状」をかけて、「白霧」に包んで、王都東門前に「転送」する。
*金貨 5000枚
念の為、ベルン男爵邸を確認する、ああ、なるほど、皆さん、集まって、酒盛りの準備ですか? エリング男爵、カーマ男爵、カナル男爵、が集まって、ベルン男爵の帰りを待っている。ご丁寧に、今回の計画書と地図を真ん中にして、談笑しているよ。もうあなた達の傭兵たちは消えたのにね、一緒にしてあげよう。
他のみなさんと同じように、全員の意識を狩って、「白状」をかけ、「白霧」に包んで、計画書などと一緒にして、王都東門前に転送してしまう。
さあ、王都の動きを見てみよう。セリーヌには、ベルン領は行く必要は無くなったから、最後のボーダ公爵領へ行こうって伝えて、馬を走らせている。
「並列思考」のおかげで、乗馬しながらでも、王都の動きが見れる。
衛兵門からの伝令がお城に伝わったから、まもなく動きがあるな。
動き回る行政官達の中で、落ち着いた様子で、書類や、私物をカバンに詰め込んで、執務室から走り出して、お城の裏へ進む行政官が2人いる。ギャンとバン、という名前だね。馬で逃げる気がありありですな。悪意の増加具合が半端ないよ。
遠隔で、「光刃」で意識を狩って、「白状」をかけて、同じ様に、王都東門の「白霧」の中に「転送」しておいた。
王都東門前の白霧は、すぐ隣のボーダ公爵領からもよく見えるからだろうな、公爵家の騎士団も白霧の場所に駆けつけている。まだ、完全に霧が晴れていない中から、意識の無い傭兵たちや、貴族たちを引っ張り出しているな。書類も見つけたようで、精査する者、公爵へ報告に戻るものなど、騒がしい。
しばらくして、公爵家から戻った騎士団の指示で、男爵以下、そこにいる全員を捕縛し始めたよ。ボーダ公爵、なかなか動きが早いな。といっても、奴らの仲間ではないことは、気配で解っているし、彼は、オルコット伯爵派なのだから。
まあ、公爵家の手を煩わせてしまうので、何か、お礼でも考えておこう・・・
ボーダ公爵邸では、なんというか?いろいろあったけど、結構、公爵が気を使ってくれているようだった。騎士団のみなさんも動き回ってくれたようなので、執事さんに声をかけて、皆さん、お疲れのようですし、「急遽開催!オーク焼肉パーティ」なんてどうですか?
「おお、良いアイデアですね〜」ってなって、オークを2体出して、さあ、解体ショーです。ギルドの解体担当ゴンスさんから得た「解体」、役にたつよ。
どんどん、ブロック肉に仕分けしていって、料理長たちが、大きく、ステーキ用と、小さく焼肉用に切り込んでいる。網焼きの準備も出来たので、ドンドン焼き始めると、肉の香ばしい香りが広がっていく。ここで、セリーヌとボーダ公爵も現れて、執事さんから、説明があって、無礼講の焼肉パーティが始まった。
特別席の公爵、セリーヌ、騎士団長あたりには、ちゃんとした? ステーキが用意されているよ。料理長も抜かりない。
これからは、酒も収納しておこう。きっちり、執事さんの号令で、ワインが振る舞われている、こういう気遣いは必要なんだな。
宴の終わりには、公爵からも、「ありがとう」って言われてしまったよ。答え方も知らないので、僕は、黙って、頭を下げるだけだったけどね〜。
PS. 近況ノート210 に、オルコット伯爵領から、王都まで、主だった貴族の領地の位置を示した地図を掲載しています。手書きで、見にくいかな?
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