ミカエル=エスカリヴォルグ ──後半──
「な、なんなのあの人……。 さっきの天使さんとは段違いな強さなんだけど……」
「くそっ……強すぎるだろ。 まさかリフレクションを壊されるなんて……。 これがミカエルの実力、なのか……」
「ふん、何を世迷い言を。 この程度な訳がないだろう。 私はまだ実力の半分も発揮してはいない」
「「…………!」」
冗談もほどほどにしろよ。
これで半分以下の力だってのか?
……ダメだ、勝てない。
少なくとも今の俺達じゃあ為す術もない。
「貴様らでは私に傷一つとしてつけられん。 降伏しろ。 降伏さえすればその命、一切の痛みなく終わらせてやろう」
多分、楽な方はこのまま大人しく降伏して、死を受け入れる事だろう。
これだけの実力なのだ。
誇張ではなく、ミカエルなら痛みを感じるまでもなく殺してくれるに違いない。
「どうする、咲。 降伏するか? 正直な話、このまま戦えば苦しんだ末に死ぬことになるのは明白だ。 仮に生き残ったとしても、きっとこの世界はもうまともじゃない。 生きている方がつらい可能性も……」
「かもね。 でもわたしは降伏したくない。 ヴァルキリアドールズなんて変なのになっちゃったけど、折角生き返ったんだもん。 もう一度死ぬなんてあり得ないよ。 死んでいった人達の為にも、わたし達はきっと生きなきゃならないと思う。 満足のいく死を迎える為にも」
「…………だよな。 ああ、全くもってその通りだ。 ……はは」
「六花?」
いきなり苦笑する幼馴染みに咲が小首を傾げる中、俺はゆっくり立ち上がる。
血が滴る拳を握りしめて。
確かにここで諦めたら楽だ。
でもそんなのは思考の放棄だ。
今やどうなっているか想像もつかない世界から目を逸らしたいだけの言い訳に過ぎない。
なら少しでも人間らしく足掻いてやる。
たとえ最後にどんな死に様が待ち受けていようとも。
死んでいった人達の為に生き、そして一矢報いる。
それが生き残った者の責務だと思うから。
「いや、なんでもねえよ。 んじゃ、みっともなく足掻くとしますかね。 折角拾った命なんだ。 自分から手放すのもバカらしいしな。 なっ、咲」
「うん、そうだね。 一緒に足掻こう、六花」
咲はハニカミながら俺の手を取り立ち上がる。
そして俺達は人差し指でミカエルを指差しながら、大胆不敵に宣言した。
「って訳だ、ミカエル! 悪いが……!」
「徹底抗戦させて貰うよ! 人間らしくみっともなくね!」
その態度がよっぽど腹に据えかねたらしい。
「……ふざけた奴らだ」
ミカエルの目元には血管が浮き出ており、見るからに激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態。
最早手心を加える気すら無くなったミカエルは、剣を光へと還し、空となった右手を天へ掲げると……。
「ならばもう良い。 これで終いにするとしよう。 我が最大の奥義。 【
頭上に槍をかたどった雷が虚空より姿を現したのである。
「「……やべぇ、スゴいの出てきた」」
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