第4バグ・嫁(設定)エリスとの初夜
出雲は柄にもなく緊張していた。
女神の前でもそこまで臆することは無かった彼が、だ。
水浴びをして体を清めた彼は布一枚だけの姿だった。
時間は午後9時を回ったあたり。寝室の修理したベッドの上でこれから起きることに、出雲はただただ身を震わせていた。
胸の内から湧き出てくるのは強い正と負の感情。
今から男の本懐を遂げるという期待。
上手く出来るかという不安。
その両方が混じった気持ちによる震えは、武者震いとも恐れとも取れる。
「お待たせ」
「う、うん」
木が軋む音を立て、出雲と同じように薄い布を纏った少女が部屋に入ってくる。
彼女は微笑みながら彼の傍へとやって来ると、静かに出雲の隣に座った。
現代のシャンプーやボディーソープも使用していないのに、彼女からはやたらと良い匂いがした。
「緊張してるの?」
否定しきれなくて頷いてしまう。
「ふふっ、可愛い」
ただの幼馴染から嫁へと進化を遂げたエリスが、指を出雲の頬に当ててくる。
柔らかな指の腹が皮膚を包み込む感触だけで、脳の回路が焼き付く感じがした。
「まさかイズモとこんなことをする日が来るなんてね」
「俺も思ってもみなかった」
今度はこっちが彼女の髪に触れる。
さらさらとした髪を触っているだけだというのに、高鳴る心臓の動きが更に激しくなった。
「ねぇ。もっと触って」
彼女は出雲の手首を掴むと自らの胸へと近付けてくる。
白い素肌と火照った肉体は見ているだけで脳が沸騰してしまいそうになるのに、彼女はより上の高みへと昇らせようとしてきていた。
彼女の膨らんだ山に指が触れる寸前で、出雲は息を呑んだ。
今からエリスとえっちをする。
頭の中がそれだけのワードで支配され、他のことを考える余裕などなかった。
出雲はこれが初体験となる。
果たして存在そのものが壊れていた少女との交わりが初体験と呼んで良いのか、という思いもあったが、深くは考えないことにした。
いずれにしろ自分は今日大人の階段を上る。
そのような希望を持って、とうとう出雲の手の平が彼女の膨らみへと触れようとする。
手に彼女の体温が伝わってきた。
そう思った時だった。
「な、なにー!!」
エリスの胸へと手を伸ばしていたはずなのに、何故か正面にはラーメンを啜るエイルの姿があった。
「エリスのおっぱいは何処に!?」
「何を言ってるんですかこんな朝っぱらから。ラーメンは上げないっすよ」
「え、なんて」
「だからラーメンは上げないっすよって」
「いや、その前だよ」
「? 何を言ってるんですかこんな朝っぱらから、っすか」
「朝!?」
慌てて窓へと視線を向ける。
確かに彼女の言う通り朝日が昇っていた。
「え? 時間が飛んだ?」
「は? とうとう頭狂いました? そんなことあるわけないじゃないっすか!?」
「いや、俺もそう思うんだけど! 現につい数十秒前まで夜だったのに、今は朝になってて。おまけに寝室からダイニングに移ってるんだが!?」
「認知症っすかね?」
「簡単に流そうとすんなや!!」
(こいつと話しても埒が明かない!)
平気な顔でラーメンを食べ続けるエイルから離れ、2階の寝室へと向かう。
ドアを破るように中に入ると、ベッドの上ですやすやと眠る嫁の姿があった。
「エリス!!」
訳の分からない事象につい声を荒げてしまう。
名前を呼ばれた側の少女はどうやら今の声で目覚めたようで、目元を擦りながら上半身を起こした。
「んー、どうしたのーイズモ」
「君に聞きたいことがあるんだけど」
「なーに?」
まだ眠たいのかぼんやりとした表情でこちらを見てくる。
どことなく疲れているようでもあった。
ちなみに彼女は服を纏っていなかった。
「昨日の夜何したか覚えてる?」
「うーん?」
エリスは数秒にも満たない時間考える素振りを見せると、何故か頬を赤く染めて言葉を紡いだ。
「そんな恥ずかしいこと言わせないでよ。イズモの馬鹿」
(ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!! やっぱやってるー!!)
頭を抱えて地面にうずくまる出雲。
理解不能な現実に頭よりも心が付いていけなかった。
「出雲、昨日の夜えっちしたんすね。とうとう大人の階段上っちゃいましたか」
事実に絶望し掛けた時、後ろからひょっこりとエイルが顔を出してくる。
のほほんとする同居人の姿を見てようやくエリスの頭も目覚めてきたのか、彼女は急いで布団を肩まで持ち上げていた。
「階段上ってたと思ってたら実はエレベーターだったんだよ!!」
「何言ってるんすか出雲。本当に変っすよ、今日の出雲」
「良いから出てって二人ともー!!」
顔を真っ赤に染めて叫ぶ放つエリスの言葉を受け、出雲はエイルに引っ張られる形で部屋から出ていった。
「童貞卒業出来て良かったっすね」
エイルの何気ない一言を聞いた途端、目を血走らせながら出雲は報告書を書き殴った。
真に驚くのはこれからだという事実に気付かずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます