3、約束

 それから少し経ち、夏も終わりかけの頃、ショウは外遊びの時間に、園庭の隅にある大きな木の下にオレを連れて行った。また地面に絵でも描くんかな。

「ショウ、どうした?」

「こうくん、こゆびだして。」

「?いいけど…」

 怪訝な顔をしつつも言われた通りにし、どうするのかとショウを見た。

 するとショウは自分の小さな小指を差し出し、オレの小指と絡めるように曲げた。

「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!」

 舌足らずな声で歌い終わると、ショウはそっと指を解いた。

「あのね、これね、せんせいにおしえてもらったの!こうくんとしょうくんはずっとともだちだよ!やくそくね!」

 そう言っていたずらっ子のようにショウは笑う。

 その顔を見て、胸の奥がじわりと熱くなった気がした。

「こうくん…?」

「…なんでもない。ありがとう。」

 ショウが少し困ったような心配そうな顔をしてくるので、オレは立ち上がって笑ってみせた。とっさにしたので上手くできたかはわからないが。

 指切りなんて子供の拙い約束だ。でもそうしてもらえたのが、友達と言ってもらえたのが、なんだかオレは嬉しかった。

 

 夕方頃、保育園にショウのお母さんが迎えに来た。

 ショウのお母さんはいかにも仕事帰りという格好で、長い髪を一括りにしている。目元がショウと似ていて、優しい顔をしていた。

 ショウのお母さんは先生と何やら話し込んでいる。出る身支度をしているショウを、少し不安そうに見ている、気がした。

 それが気になって先生たちに近づこうとしたが、身支度を終えたショウが「こうくん、ばいばい。またあした、あそぼうね」と小声で言い、小さく手を振ってきたので、オレも返事して手を振り返した。

 ショウは嬉しそうにお母さんのところへ走って行き、ショウのお母さんは優しく微笑んでそんなショウを抱きしめる。夕焼けで赤く染まった町の中、2人は楽しそうに話しながら手を繋いで帰っていく。

 オレは2人の姿が見えなくなるまで、黙ってその様子を眺めていた。

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