2、似顔絵

 それからオレは、ショウと一緒にいるようになった。

「こうくん!」

 幼稚園での自由時間になって、オレがショウのところに向かうと、ショウも笑って走って向かってきた。悪い気はしなかった。

 オレはただそばにいるだけでなく、ショウのごっこ遊びやなんかの遊びに付き合うこともあった。正直言うとそれをすることにあまり気乗りはしなかったが、ショウがせがんで聞かないので仕方がない。

 「『フハハハハ、また会ったなぁディーサイダーマン!しかし、今度こそ貴様は死ぬ運命だ!』」

 「でたな、くーろのす!そんなうんめーにまけるもんか!くらえーっ、すーぱーあるてぃめっとでぃーさいだーきっく!」

 「あ、ちょ、ばか…!」

 「うわぁ!?」

 オレに向かってショウはキックを入れようとするが、空振ってぐらりと姿勢が崩れる。そしてそのままドテッと後ろに尻餅をついた。

 「…っ…うわぁあああんっっ!」

 案の定尻を打った痛みでショウは泣き出してしまった。

 「翔くん、どうしたの、怪我しちゃったの?大丈夫?」

 オレがオロオロしていると、先生がやってきて、ショウに怪我がないか確認しながら必死で宥める。幸い怪我もなくショウはすぐに泣き止んだが、その様子を見てオレは申し訳なくなった。

 この日以降、2人の間で「ごっこ遊びで蹴りはしない」というルールを決めた。

 とはいえごっこ遊びはたまにしかしなかった。大半は絵を描いたり子供向けのアニメや番組を観たりしていた。

 特にショウは絵を描いたりものを作るのが好きだったので、よく鼻歌を歌いながら描いていた。逆にそういう事が苦手なオレは、その様子を隣で見ていた。

 紙いっぱいにクレヨンで自由に描かれた絵たちを、ショウは楽しそうに描いてはオレに見せてくれた。

 どの絵にもショウや家族や先生らしき人物が描かれている。そのうちの一人をショウは指差して

「これはね、こうくん!うまくかけてるでしょ?」

と言って笑った。

 それを見ると、他の人間よりも濃い色のクレヨンで塗られた肌に、服の色を模してか、赤と水色で体は塗られている。黒い目に少し上がり目の太い眉。ご丁寧に剛毛でツンツンの短髪頭も再現されている。そのせいでウニように見えなくもないが…確かにこれはオレだな。

「そうだな、そっくりだ。ありがとうな、ショウ。」

「うん!」

 オレがお礼を言うと、あいつはくりくりした目を細めて嬉しそうに笑った。

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