「タイトル/コウくん」

月餠

1、出逢い

 「だぁれ?きみも、おえかき、したいの?」


 「…え?」


 とある初夏の午前中。保育園の公園遊びで。

 沢山の園児たちが元気に遊んでいる中で、オレと同じで一人でいる奴を見つけた。

 公園の隅っこの日陰でしゃがみ込み、木の枝で地面に何か必死に描いているようだった。

 その時オレはなんとなく、そばに近づいて様子を眺めていたものだから、そいつは絵を描くのをやめて顔をあげ、こちらに向かってそう言ってきたのだ。

 オレはびっくりして、思わずまじまじと相手を見た。

 不思議そうにこちらを見てきたそいつは、黄色い園児帽子と体操服を着ている。少し癖っ毛の茶髪の下にある目も同じく茶色で大きい。頬は桃みたいに丸っこくてうっすらピンク色で、なんというか可愛らしかった。

 「じゃあねぇ、ここは、しょうくんかきたいから、こっちのほうでかいてね。あ、えだはねぇ、あっちにたくさんあるから、しょうくんがとってきてあげるね!」

 「は?」

 こちらが呆気に取られているのも気にせず、しょうくんと名乗ったそいつは、枝が沢山あるという木の植え込みの方に走っていった。


 「しょうくんはね、しょうくんっていうの。きみは、なんていうの?」

 「…オレは、コウタロウ。」

 「こうたろー…じゃあ、こうくんね、よろしくね、こうくん!」

 そう言うとあいつはパッと花が咲いたように笑った。

それがオレ、黒谷くろたに幸太郎こうたろうと幼馴染のショウ、蒼山あおやましょうとの出会いだった。

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