到来

中間テストが終わると梅雨も晴れ、ジメジメした空気はカラッとした太陽に照らされ消えていく。

「あつ〜」

教室に着くと、机の上に伸びた百奈の姿があった。窓が空いていてそこから申し訳程度にそよ風が入ってくるが正直対して変わらない。

「おはよう」

「あっ、茜。おはよう」

「静は?」

「寝坊だって」

相変わらず自由なやつだな。次々と生徒が教室へと入ってきて天城さんにも挨拶をする。相変わらず少しだけ距離を感じるがそれもそのはず、しょうがない。

段々と騒がしい校舎は静まって、チャイムが鳴るとみんなが席に着く。

結局、放課後まで静は教室に見せることは無かった。

「遂に静もサボることを覚えてしまったか」

窓の外を見て感慨深く頷く百奈だが、外は別に夕暮れ時でもなくむしろ曇りだしてる。

「まるでサボる快楽を知ってるみたいな言いぶりだな」

「知ってるよ。私、去年どーーしても行きたいライブがあって学校サボったし」

確信犯じゃないか。まぁ自由な校風が売りの高校なのでそれくらいはいいのだろうか、意図的なサボりはしたことがないので分からない。

教室を見渡すと、既に天城さんは帰ってしまっていた。今日は全然話しかけることが出来なかった、と残念そうにしていると百奈にトントンと肩を叩かれる。

「なに?」

「これこれ」

と言って見せてきたのは百奈と静のやり取りだった。彼が学校に来なかったのは風邪をひいたからみたいだ。

「私はこれから見舞いに行くけど茜はどうする?今ならまだ間に合うと思うけど」

と、こいこいと窓の外をみやる。すると校門を抜ける天城さんの姿があった。

「いや、見舞いに行くよ。確か静って一人暮らしだったよね。さすがにそっちの方が心配だ」

しばらく黙っていた彼女だが、すぐに口を開いた。

「茜ならそう言うと思った。本当は私だけで見舞いに行って2人の甘々な関係を築こうと思ってたんだけど」

「じゃあやめておくよ」

「えっ?あ、え?」

「だから、甘々な関係を築くんだろ?なら邪魔しちゃ悪いと思って」

みるみるうちに彼女の顔は赤くなる。いつも押され押されだから、たまにはこちらから引いてみようと思ったらなんかまずいことをした気がする。

「茜のばか」

「ごめt」

「ほらっ、行くよ!」

恥ずかしさを誤魔化すように彼女は僕の手を引く。その手は火照って熱く、彼女の感情が表れている。

「分かった、分かった。でも僕は料理とか出来ないから冷えピタとか探すよ。百奈は腕を降るってお粥を作ってあげて。きっと喜ぶだろうし」

「……うん」

たまには2人の初心な関係を見るのも悪くない様な気がした。

だが残念なことに僕は静の家の前まで行くと「お前はダメだ」と言われて締め出された。

僕はもう絶対見舞いには行かないとこの時に誓った。理不尽野郎め。

ちなみに次の日、静は何事もなかったかのように登校していてむしろいつもより元気だった。

「ありがとうな、百奈」

「うんっ!」

二人の関係はより一層良好になっていた。

「じゃあ、そろそろ私と付き合おうよ」

「まぁ落ち着け。人生は長いんだ、急ぐ必要は無い」

「そっかー。確かにそうだね!」

全肯定も難儀だな。

僕は二人のいつものイチャつきを近くで摂取しすぎた。朝から疲れる。

僕はため息をついて机に突っ伏した。

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