デジャブ

「それでは、これより再補習対策を始めたいと思う。異論があるものは挙手を」

「はい」

「なんだね茜くん」

「なんで?」

「だって、思った以上に難しかったんだよ〜」

救いが見えません、助けてください。

確かに2年にもなれば問題も難しくなってくるし文理選択があったから大学も視野に入ってくるけれども。

「問題見せてよ」

「ほい」

机の上に置かれた問題。一通り目を通してみたが、難しいっちゃ難しいが勉強をしていればどうにかなりそうな問題な気もする。

「確かにちょっと厳しいかも」

「問題はそこじゃなくて」

補習問題の冒頭、つまり文章の簡単な解説が書かれている場所を指した。

「紫の上の死?今授業でやってるところじゃないか」

「んなの解けるわけないだろ。こっちは必死で中間試験の範囲をせっせとやってたのに」

思わず愚痴を漏らす静だが、彼の言うとおりこれはあまりにも酷な気がする。どおりで最近見た事のあるような文章だと思ったわけだ。

「その旨は先生に言ったのか?」

「言えるわけないだろ。触らぬ神に祟りなし、だ。補習のためにわざわざ険しい山登りをロッククライミングにしてるようなもんだぞ」

そこで僕は一つだけ案が浮かんだ。良いか悪いかはさておいて、だ。

「なら、諦めたら?」

「えっ?」

「だってテスト範囲から出てくるみたいな示唆をしておきながら新しく習った部分から出されたら、よっぽど古文が得意か記憶力のいい人じゃないと解けない」

「それに、別に赤点を取ったら終わりってわけじゃないんだ。留年条件は3回連続同じ教科はて赤点とか、累計5回赤点取るとか色々噂はあるけどつまりは1回の赤点じゃ対した問題じゃないんだ」

「なるほど。でもお前は、いやなんでもない。そうするか」

「それでいいの?」

と百奈は小さく呟くが、こんなの僕だって補習だったら絶対解けてない。何より二年生は始まってまだ二ヶ月だ、これから取り返していけばいい。

「じゃあ今日はどうするの?私もう雨音ちゃん呼んじゃったよ」

噂をすればなんとやら。ちょうど彼女が店に入ってきた。みんなが彼女のことを見るので非常に照れくさそうにしている。

「何か変ですか?」

「いいや、別に可愛いよ」

「?!」

顔が真っ赤になって店を出ていこうとしたので、何とか説得して残ってもらう。にしても今のはダメだろ、と我ながら反省する。

こういうのは静みたいなチャラチャラしたやつが言うからう許されるのであって、僕みたいな空気が言ったらただのセクハラになるんじゃないか?

なんて心の中で自問自答していると、静に肩を叩かれる。

「気にするなよ。お前が気にしたら天城さんが余計に意識するだけだぞ」

たまにはいいこと言うんだな。

深呼吸して呼吸を整わせる。彼女を見ても緊張はもうしない。

「来てもらって早速なんだけど、今日の勉強会はなしって言う方向で決まったんだ。わざわざ時間作ってもらったのにごめん」

「構いませんよ。皆さんのことは覚えてないですけど、私を気にかけてくれるのは皆さんくらいでしょうから。嬉しいです」

そうやって、嬉しそうに笑うのはどうしてなんだ。君にはきっともっと友達がいたはずなのに。

「じゃあさ、親睦を深めるのも兼ねてカラオケ行こうよ!」

唐突に百奈が言い出してそれに静ものっかる。時間はまだ4時前。まぁギリギリ遊べなくもない。

「どうする天城さん。別に無理してくる必要は無いよ。僕も前行ったけどだいたい百奈のソロリサイタルだから」

「そんなことないよ!」と弁明する彼女をスルーして彼女に尋ねる。

「行きたいです。たまには、発散したいものがありますし」

「ほーら、雨音ちゃんも行くんだ。嫌なら茜だけ帰ってもいいよ」

「.........行くよ、僕も」

財布の中身を見て溜息をつく。本当はお金が無いから行きたくなかったんけどなあ。

店を出てカラオケに向かう。そうは言いつつも僕は楽しみだったする。だって天城さんの歌が聞けるかもしれないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る