第18話 空を駆る者
街を出て歩みを進めると、モンスター達がじわじわと強くなっていっているのがわかる。魔力のことも考えながら戦わないといけないし、前衛のラークとアルスの怪我の回復をしたり、葵は大忙しだった。
そんなふうに少しずつ進んでいき、五日目となった。とうとう魔王城の霧が出てきた。強いモンスターが出てくるはずだ。
「皆、気をつけろよ!ここからは上級モンスターが出てくるからな!」
ラークが檄を飛ばす。葵は少し不安になり、ぎゅっと杖を握りしめた。
そんな葵の様子に、芹也はそっと葵の肩に手を置いた。
「大沢さん、大丈夫?」
芹也は心配そうだ。葵は慌てて頭を振る。
「すみません!少し緊張してしまって!」
そう言いながら、握る杖をギュッとさらに強く握りしめてしまう。
「大丈夫だよ、大沢さん。俺達がついてる。」
芹也にそう言われると、葵は少し安心することができた。はい、と答えて気を取り直す。(大丈夫、皆がいるんだから。)葵はそう自分に言い聞かせて、また歩き出した。
五人で慎重に進む。魔王城もうっすら霧の向こうに見えている。
その時だった。
五人の目の前に、大きなコンドル型のモンスターが現れた。
「お前達、この先は魔王城と知ってのことか。ここで引き返すなら命は助けてやろう。」
モンスターはそう言って羽を羽ばたかせる。葵は圧倒されて言葉が出なかったが、横から芹也が返事をする。
「俺達は魔王に会いたくて来たんだ。引き返すわけには行かない。」
「それでは私を倒してからにするのだな!」
コンドルはそう言うと勢いよく5人に向かって突っ込んでくる。葵は慌てて、
「ホーリーシールド!」
と、盾を展開する。間一髪のところで五人に盾が展開され、コンドルの攻撃から身を守ることができた。
コンドルは攻撃がうまく当たらなかった事に少し驚いた様子で、体勢を立て直す。その間に五人は攻撃の準備を整え、ラークとアルスが飛び出していく。そしてその後ろからフリージアが弓で援護し、芹也は攻撃魔法を唱える。
四人に一斉に攻撃されたコンドルは逃げ場がなく、芹也の魔法に絡め取られていく。
「おのれ…!」
コンドルは高く飛び上がり、
「サンダーウィンド!」
と、雷と風の混ざった攻撃を仕掛けてくる。それは葵のホーリーシールドがあるので直撃することはないが、コンドルが高い位置にいるのでラークとアルスの攻撃が届かない。
どうしよう、と葵が思ったその時、芹也が「大丈夫。」と葵に言う。
「フリージアさん、弓であいつを威嚇し続けてください。大沢さんはホーリーシールドを展開し続けて!俺があいつを仕留めます!」
そう言うと芹也は、フリージアの弓を避けるコンドルに向かって魔法を詠唱し始める。
「ファイアーウォール!」
コンドルの真下から炎の竜巻が起き、一気にコンドルを焼き尽くす。コンドルはギャアアと叫び、そのまま地面へと転がった。
ラークとアルスがコンドルに近寄ると、地面のコンドルは「はははは!」と笑い出した。
五人は何事かと顔を見合わせる。
「なかなかの連携力だ。恐れ入ったぞ。」
起き上がったコンドルは先程とは打って変わって、敵対的な雰囲気がない。
「お前達は魔王様になんの用がある?普通の人間達は魔王様に会いたいなどとは思わない。さしずめ、この世の神絡みといったところか。」
5人は驚いて息を呑んだ。その様子を見てコンドルは愉快そうに笑う。
「やはりそうか。だとしたら、ここは通さねばならないな。」
コンドルの言葉に、芹也は怪訝そうな表情をする。
「なに、魔王様にお会いすればわかる。」
そう言うとコンドルは羽を羽ばたかせ、空高く舞い上がる。
「城はここを真っ直ぐだ。なに、私が倒されたと知ったモンスター達はお前達の前には姿を現さんよ。魔王様に会ってやってくれ、旅人達よ!」
コンドルは頭上を旋回し、そしてそのまま魔王城に向かっていった。
五人は何が起きたのか分からぬまま、呆然とコンドルの姿を見送ったのだった。
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