第17話 ひととき
気持ちが落ち着いた芹也は葵と共に三人の元へ戻った。
そして、五人は改めて次の街へと歩みを進めることにした。
その日の夕方には次の街へとたどり着くことができ、五人は早めに宿をとり夕食を食べ、今日のところは早めに休むことにした。情報収集もしたかったが、スオウの来襲で疲れていたのもあるし、この数日野営だったのでぐっすりと眠れていなかったのもある。とにかく五人は複合的な理由でとても疲れ果てていたので、早々に休むことに決めたのだった。
翌日。
葵はアンディと一緒に、早朝の街を散策していた。アンディの散歩ついでということもあるが、この街は今まで訪れた街の中で一番大きな街だったので、街を眺めたいという気持ちが強かった。
この街では足りなくなった薬や食糧を買い足し、酒場で情報収集をしたら魔王城に向かう。魔王城まではもう街や村はない。ここであと一日ゆっくり休んだら、五日は野営を覚悟しなければならない。更に、魔王城に近づけば近づくほどモンスターは上級モンスターとなり、強くなる。今の自分達の強さが上級モンスターに対抗しうる程度まで強くなっているのかは、相対してみないとわからない。そのことに対して、葵は少し怖さを持っていた。レベルはもう80まで上がっているが、それでも足りなかったらどうしよう、と。その不安を取り払いたくて、葵は街を、そして空を眺めていた。
「アンディ。」
「んー?」
「私ね、この世界そんなに嫌いじゃないよ。」
「そうなのか?」
アンディが片耳を上げて足元から葵を見上げる。そして葵もアンディに視線を落とした。
「うん。悪い人に会ったことないし。でもさ。」
「うん?」
「やっぱりさ、帰りたい。うちに帰りたいんだ。ここまでずっと必死にレベル上げとかしてきたから思い返す余裕なかったけど。お父さんとお母さん、弟…あ、アンディはにとってはお兄ちゃんだけど太一にも会いたい。」
「そうだなあ…会いたいよなあ…。」
そこまで言うと葵はまた空を見上げた。
「高田さんにも帰りましょうって言ったしね。魔王がどこまでスオウの情報持ってるのかわからないけど、とにかく頑張らなきゃ。」
そう言うと葵は、よーし!と気合を入れる。アンディは葵の行動にびっくりした様子だ。
葵はそんなアンディを気にすることなく、宿屋まで来た道を戻って行った。
そして、次の日。葵達五人は魔王城に向かって出発することになった。魔王城については、やはりこの街は魔王城に近いだけあって情報がたくさん入ってきた。魔王は一つ目だとか、真偽の怪しい噂もあったが。
魔王城に近づくと出てくる上級モンスターは、魔王城付近から発生している霧が出てくると出現するそうだ。それはこれまで知らなかった情報なので有り難かった。どうやらこの街の人達はその霧を目安に森や山に入っているらしい。
「霧が出てきたら俺達の実力がわかる、ってことか。」
アルスがポツリと呟き、ラークとフリージアがそれに頷く。
「気を引き締めていきましょう。」
そう言うフリージアに、四人は力強く頷きあったのだった。
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