零 壱
Y4_弌Q嘶伍(やーいちきゅうよんごう)
第1話 "別れ"
地球には、それに従ずる月という衛星がある。
そこに地球に住む人は行き、世界の真実を知ったという。
それは、宇宙というものは無限に広がり存在するのに対し、人類には限界があるということだった。
それで良いと一人は言い、もう一人は託す事を選択した。
彼は"ZERO"に全てを託した。
そう、これは["ゼロ"を"イチ"にするための物語]だ。
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別れとは
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だからこれでいい、私の人生が、ガガーリンの言う私のすべてが"あの子"なら、私は彼女の"零"になる。
あぁ、だから
[君にゼロと名付ける、自分の正しいと思うことをやりなさい]
彼はきっと私を作ってくれた人なのだろう。
優しい目で、目覚めた私に向けて言う。
[そうか、私はゼロか。なら、私は"ソレ"でいい]
彼女はきっと、歩み続けてくれる。
この世界が、電粒子で溢れた時から、きっと決まってたんだろう。
[あぁ...ありがとう..."ゼロ"]
彼はそう言い残して、呼吸を辞めて、心臓を止めた。
これが"別れ"、私の、"ゼロ"の、最初の
["さようなら"、父さん]
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外へ
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機械式人型疑似生命体 正式名称型番 χ-0 元より与えられた唯一の私自身の記録。
それでも、私は与えられた"アイ"と"ゼロ"という名前を背負い、腰に提げて歩き続ける。
それが、それが正しいと思ったから。
私の最初に与えられた"別れ"は、私に歩む理由をくれた。
あぁ、だからきっと、
[世界はこんなに美しいんだ]
口からポロッとそんな言葉が出るほど、区域"摩天楼A区画"から覗く満点の"宇宙(ソラ)"は美しかった。
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しばらく歩いて...
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摩天楼A区画を歩きつつ周りを見れば、数匹の猫が居た。
世界は終わりを迎えて、海は塩分をすり減らしながら世界中を潤わせて緑を奪っていったという。
生き物も、人類も消えていった、それでも、彼等は生きるのだ。
"何故"で止まるな、私はそう思う、だから私は彼等のように歩き回る。
...灯りだ、人工的なネオンと炎がそこにあった。
[やぁ、お嬢ちゃん]
茶髪の女性が陰から出てきた。
寒さを凌ぐ為に、マフラーを巻いている。
[こんばんわ、私はゼロ、貴方は?]
彼女の名前は
[ハル...ハル・アストロニーア、よろしく]
私の初めての"挨拶"だ。
星が落ちてずっと経つというのに、人は逞しく、そして淋しく生きている。
[寒いだろ?こっちに来な]
確かに、気温は氷点下に近い。
[私は平気だ、ハルの様に血が通って生きている訳ではない]
少し寂しそうな顔をした気がするが、ハルはすぐに
[そうかい、まぁでも、こっちにおいで]
ドラム缶を溶接して作ったであろう椅子が2つある。
私は彼女の隣に腰掛けて聞く。
[もう一人居る?]
["居た"かな...私の弟のニール、彼は病弱でね、もう居ないんだ]
[そうか...]
人は持って産まれる特性や個性がある。
それが良くも悪くも"ソレ"を左右する。
[ちゃんと"お別れ"をしたからね、辛かないさ]
辛くないなんてきっと嘘だろうけど、
[ハルは"別れ"を受け止めて、前を見る力があるんだな]
[私は彼を見送ってしまったからね、呪いや祝福みたいなもんさ]
前を向いて、それを糧に生きている。
命を削り取る寒さやこの環境に負けないように。
火の光は、記録の何よりも、先程のソラとは別に鮮やかに美しく見えた。
[そろそろ私は行くよ]
[おう......あぁ、そうだ、これを持っていきな]
植物繊維で編まれた薄緑の袋だ。
[お守りか?]
[ふふ...さぁ?呪いかもな]
人はこうやって生きていく、そうなんだな。
[ありがとう、"じゃあ"]
彼女に軽く手を振り見送る。
銀色の美しい髪の少女だった。
きっとニールは、無から始めるために本物を生んだんだろう。
彼女は、ゼロはきっと、本当の人になれる。
ここじゃ太陽だって見放して、ずっと拝むのに時間がかかる、それでも私は離れられない。
[さよならニール、そしてゼロ、いつかまた、会えるといいな]
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少し前
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ガガーリンは空で、地球の蒼さを知り、神は居ないと悟った。
私の名前はニール・アストロニーア。
開発者であり、宇宙飛行士だった。
私は月に行き、人の限界を知った。
宇宙(ソラ)には限界が無いのに、私達には限界がある。
ガガーリンはそれで良いと言った。
[君がそれで人生を投げ出す必要はないんだぞ!?君はあんなにも頑張ったんだ!なのに...]
だが、私達は母なる星に見放され、今度こそ、一人で歩き続けれる"人"が必要になった。
[だからだよ、ガガーリン]
だから、私の全てを費やして"ゼロ"を生み出した、無から起点を建てるために。
人の全てを冒険者が世界を廻ったように、ゼロはイチになるために歩き続ける。
だって世界はこんなにも美しいんだ。
工業化を極めた世界は電粒子により発展の限りを尽くすも大半の人類が息絶えた。
[ガガーリン、私にしか出来ないんだ]
だから、歩み続けて、"理由"を、それが存在しないモノでも、それがいつか胸のうちにあっても、誰もが歩き続けるんだ。
姉のハルは私をずっと側で支えてくれた。
お別れだって済ませた。
ガガーリンだって、最後まで見守ってくれたんだ。
[だから辛くなんてないのさ]
そう、自分に言い聞かせる。
息も尽きそうな身体を突き動かして彼女に仕立てた専用の衣服を着させて、今に目を醒ます彼女に目を向けた。
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別れとは、歩む最初の一歩だ。
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[記憶も記録も、なにもかも本物だ、私と人類が絆いできた奇跡の欠片たち]
[でも君はきっと、"足りない何か"を探し続けるのさ、だって君は人だから]
[あぁ...だから.............]
力を振り絞って彼女に伝える。
目を見て最期の会話をする。
だから"ゼロ"、行きなさい。
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君の信じる道へ
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つづく
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