乙女ゲーに転生した私は推しカプを作るために悪役令嬢になってみせますわ!!「オーッホッホッホ!!」え?……あら?

嘉矢獅子 カヤ

私は推しカプを作りたかっただけなのに....

「オーッホッホッホ!!」


 学び屋である校舎中に一人の女性の高笑いが響く。その女性は黄金の髪に黄金の目を持ち、鼻が高く美形で、しかし、釣り目がその女性の気の強さを表しているようであった。


「「「オーッホッホッホ!!」」」


 一つ目の高笑いから少し間をおいて様々な女性の高笑いが聞こえる。茶色、水色、黒色…様々な色の髪の毛が場を彩っている。


「オーッホッホッホ!!」


 先ほどと同じように釣り目の女性の高笑いが響く。


「「「オーッホッホッホ!!」」」


 複数の女性から高笑いが呼応する。


「さあ、皆さん。今日はこれぐらいにしてお茶会を始めましょう。」

「「「はい!!リーナお姉様!!」」」




 …………どうしてこうなった。


 わたくし、マリーナ・イプシロン・ドラプシルは転生者ですわ。この世界は『ラバーズブレイド』という女性向け恋愛ゲーム、いわゆる乙女ゲームをもとにしている世界に転生しました。


 このゲームは愛人の子として家で冷遇されていた男爵令嬢のアニーがクーデレ系王子、ツンデレ系宰相の息子、俺様系騎士、ひねくれ系魔法使い、幼馴染の男爵息子と恋愛し婚約者を押しのけてラブラブ魔王討伐をする恋愛と少しのRPG要素を混ぜた作品ですわ。


 わたくし、転生したとき思いましたの「あれ?これって推しカプが恋愛しているところを見れるんじゃね?」と。


わたくし、乙女ゲームを最初にプレイしているときはちゃんと主人公に感情移入しながらプレイするのよ?でも、乙女ゲームって色々なエンディングがあるわけで…周回しているうちに感情移入なくなって推しカップルを見つけて愛でるようになってしまいましたわ。だんだん主人公のことを娘や妹のように見えてしまうんですわよね。わたくし一人っ子でしたけど。


 そして!!このゲームでの推しカプは主人公×クーデレ系王子!!恋愛のライバルはこのわたくし!!つまり、わたくしが主人公をいい感じに王子に誘導して、二人っきりになるように配慮させれば、イチャイチャしてくれること間違いなし!!それを隠れて見るわたくし!!生カプのイチャイチャ!!生カプのイチャイチャ!!滾りますわ~~!!


 そして、わたくしの役割は下級貴族や平民をいじめるよくある悪役令嬢!!これはもう負け確!!とりあえずぞんざいな扱いと高笑いでもしておけば、わたくしから王子は離れて行って次第に主人公にアプローチをとりに行くはず!!そうなればもう勝ち確ですわ~~!!


 で!!今、ゲームと同じ軌道に乗り舞台である王立マギアリラ学園へ入って主人公と接触したんですの。


「あら、こんなところに場違な子がいますわね。ここは大陸でも名が轟くほどの名門。試験でちょっとよい成績をとったぐらいではすぐ落とされてしまいますわよ?まあ、わたくし完璧なのでそんなことは起きないのですけど。なんなら教えてあげましょうか?オーッホッホッホ!!」


 はい、見事に決まった。その結果、わたくし下級貴族も目にかけてくれる、と噂が広がり主人公をはじめとする貴族令嬢からリーナお姉さまと慕われてしまいました。


 ………なんで?いやぁ、わたくし結構きついこと言いましたわよ。


 まあ、それはおいといて、わたくし先ほど、このゲームはRPGといいましたわね。元の世界では女は戦場に立つことがなかったのですが、RPGとして攻略キャラとラブラブ魔王討伐するこの世界では女の子は魔法使いとして戦場に立ったりするんですの。しかも、女性限定の魔法部隊なんかもあって、魔物の討伐やら戦場やらに駆り出されるみたい。


 もちろん、貴族令嬢も一般兵の指揮官として(主に後方の魔法部隊ですが。)参加することも多々あります。怖すぎですわ……。(初陣済み)


 指揮官として戦場に行くのですから統率・指揮をするという面で部下にはなめられてはいけません。しかし、これまで戦のいさえも知らなかった貴族令嬢たちが初陣で気丈にふるまえるはずもなく……部下の士気は急落下、命令無視なんて日常茶飯事、ひどい場合には婦女暴行や略奪、横領までやりたい放題。その責任は貴族令嬢やその家族にいってしまいますの。


 だいたい罰金で済ませられるのですがその金額も馬鹿になりませんし、だからと言って戦場で気丈にふるまえる女性はそれはそれで殿方に人気がない。詰んでますわ……。


このようなひどい社会システムの中、公爵令嬢のわたくしが初陣にて高笑いをしましたわ。高笑いは悪役令嬢の特権ですもの。高笑いをした結果、ほかの令嬢たちが真似し始めましたの。


なんでも、高笑いは指揮官として一般兵を委縮させる効果があり、余裕があるとわかりやすい形で伝えられるからだそう。…なんで?


初陣から戻ると300年前の令嬢たちも自らを奮い立たせ、兵士に命令を下すため甲高い笑い声をあげた、という文章が見つかり、貴族令嬢としての救世主だけでなく古典派文学者という面として男性からは注目されることになりましたの。ええ...


ゲームの舞台である学園に入学するころには古典文学者の実践派であり、全貴族令嬢の救世主として有名になってしまいましたわ。そのせいで、パーティーでは高笑いについて聞いてくる人や文学者として議論しに来きた人と忙しすぎますわ。


しまいには、前世の名残のせいで使用人たちに優しくしてしまい、庶民派として知られてしまいました。彼らを見ているとブラック企業に入っていたころを思い出すんですよね。


..........悪役公爵令嬢要素......どこ?


じゃあ婚約者である王子はどうなのか。婚約者として挨拶した時から淡泊な反応をしていたんですけど、それがお気に入りになったようで。王子のおつきの人から「普段誰からも優しく接するお嬢さまが自分にだけ厳しく接するところにほの暗い何かを感じる」といっていたとこそっと言われたときにはあまりのさまに絶句してしまいましたわ。ドMですわ!?ドMですわ!?ドMですか!?


い、いやぁ.....原作ではそんなはずではなかったんですけど。どっちかといえばぐいぐい行く、Sよりの方だと思っていたのですけど......どうなってるんですの?



話を今の状況に戻しますわね。今、わたくしが何をやっていたかを簡潔に説明いたしますわ。令嬢たちが週に1度、金曜日の朝に高笑いを練習する時間となっていまして、高笑いの練習が終わればわたくし主催でお茶会を開いておりますの。わたくしがこの中で一番位が高い公爵ですから主催になるのは当然ですが。このスイーツも紅茶もカップもお皿もわたくしの家のお金から出ているのですわ!!ドヤ顔ですわ!!


ん~今日もスイーツが美味いですわ!!パクパクですわ!!


そう思いながら前世の芦毛の獣人と同じようなペースで食べ続けるマリーナ。この女前世はブラック手前企業勤めでお金のすべてをゲームや推活で使い切っていたのでおいしいご飯を食べていない、その分今世では食いだめしているのである。


「お姉さまはいつも美味しそうに食べますよね。」


そういって話しかけてくださったのは主人公のアリーさん。私に一番なついてくれているのは嬉しいのですけど、恋とかなさらないんですの?


「ええ、いつも美味しいスイーツを作ってくれる私の料理人の方々に感謝しないといけませんね。」


 ちょっとお金持ちアピールをしているのですが顔もしかめないようになりましたわね。


「ところであなたから見て王子はどのように見えますの?」


もう耐えかねて聞いてみました。これまで、アリーさんを王子に紹介してみたり、一緒に業務をさせてみたりしているのですが....なかなか進展がなくついつい聞いてしまいましたわ。


「王子様ですか?はい、とってもお似合いのカップルだと思います!!クールでかっこいい王子様にお嬢様の明るい笑顔はとても映えていると思います!!皆さんこのような恋人関係に憧れているんですよ!!」


ふぇ?どうしてそうなったの?た、確かに体面がありますから学園では王子にもそっけない振りはやめて普通に接していますけど、お似合いのカップル?皆の憧れ?聞いてませんわよ、そんなこと。


「理想のカップル?そんな風に言われてますの?少し照れてしまいますわね。」


 体面を確保するためにしおらしくしてみる。このままいけば主人公と王子は結ばれないのではないかと危機感を覚えますわ。


 だが、この女自分の間違いに気づいていない。なぜ、悪役令嬢が人様の体面を気にしているのか。悪役令嬢になりたいのであればもっと傍若無人な振る舞いをするべきではなかったのかと。


「もしよろしければ殿方の落とし方をお教え願えませんか。」


 え?そう言ってくるってことは気になる殿方がいらっしゃいますの?アリーの突拍子もない発言にマリーナはしばらく硬直する。


「アリーさん!?気になる殿方でもできましたの?」


「い、いえそのようなわけではないのですが……。」


 そういって頬を赤らめるアリーをみてマリーナ電流走る。これはいると、明らかに意識している人がいると。


「ん~?そんな嘘をつく口はここですか!!嘘つきに無理やり口を割らせるの得意なんですのよ~!!むむ!!これは嘘をついている頬ですわ!!」


 そういってマリーナはアリーの両頬を引っ張る。マリーナは口を割らせる技術も頬で嘘つきを見分ける技術を持っているわけではない。言いたかっただけである。


「ほんにゃ!にゃめてくらはい…いいまふ、いいまふから。」


 は!!頬をいじるのが楽しすぎて夢中になってしまいしたが気になる殿方がいると言いましたわ。ということはどこかのルートに確定させましたわね。王子じゃなきゃいやだ…王子じゃなきゃ嫌だ…王子じゃなきゃ嫌だ…。


「気になっている人は…ミルド様です…。」


mi…ru…do…ミルド!!ふぁぁぁぁぁぁ!!わたくしの弟ですわあああああああ!!ないんですけど!!そんなルートないんですけど!!なんならミルド自体ゲームにいない人ですわよ!?


 お、おかしい…。庶子だから屋敷内で冷遇されていたけど能力高いからわたくしの前世の知識を適当に教えておいて再現してみなさい、と命令しただけであんまりわたくしと弟とで接点ないですし。一度もアリーさんと引き合わせていないはずでは?


「ミルド?それってわたくしの弟の名前ですが……。違いますよね!?王子とか、王子とか、王子とかではありませんの?」


 冷静になりなさいわたくし!!あまりの衝撃でつい本音が出てしましたわよ!!


「王子様なんて!!お姉さまとの間に入るなんて私無理ですよ!!マリーナ商会で会長をしているミルド・ドラプシル様です!!」


 ぎゃあああああああああああああ!!弟だったああああああ!!マリーナ商会ってなに?なんでわたくしの名前勝手に使って商売しているのですか?


「え?え?マリーナ商会?なんでわたくしの名前を……ってそれより!!なんでわたくしの弟のこと知っているのですか?」


「え!?お姉さま知らなかったのですか!?このお茶会で用意されたものもマリーナ商会からのお品ばかりでつい知っていると思っていたのですが…。それと、知り合ったのは休日のアルバイトでお姉さまがマリーナ商会の受付嬢として紹介して頂いたからで……。」


 悲報、わたくしの料理人が作っていたと思っていたこのケーキ達、弟がマリーナ商会とかいうわたくしの名前を勝手に使った商会からの品だった件。……売れますわね。


 ええ、ありましたわよ!!紹介したことありましたわよ!!でも全部執事に任せていたんですもの知りませんわ!!アリーにアルバイトの紹介を頼まれたとき、ああ、そのイベントね~放置していても花屋のバイトとか勝手に見つけてきていたし人任せでいいか~、と思って適当に流してしまいましたがそれがまずかったようですわね。


「あ!ああ!!そ、そうでしたわね!!わたくしこれから用事が出来ましたのでお先に失礼いたしますわ!!みなさま、ごきげんよう!!」


「「「ごきげんよう!!」」」


 そういって急いでミルドに会いに家へ向かう。ミルドはここ数年、外に出歩いていることが多いらしいが金曜日だけは決まって家にいるらしい。


「ミルド!!ミルド!!はどこですの!!」


 屋敷に入ったわたくしは急いでミルドを呼ぶ。


「ふぁ~、いきなり何ですか姉上。今は学園にいる時間なのでは?」


 眠い目をこすりながら泥棒猫のミルドが階段から降りてくる。


「あ!!来ましたわね、ミルド!!マリーナ商会とはアリーとの関係とかどうなっていますの!!」


 ミルドはなぜ姉がこんなに興奮しているのかわからずしばらく呆けていると、胸倉をつかんできそうな勢いで来るマリーナの態度にこれは危険だと思いあわてて返事をする。


「まって!!まってください、姉上!!なんのことはわからないんですけど!!」


「アリーさんのことです!!あ、いやちがくて、違わないんだけど!!マリーナ商会のことです!!」


 まくしたてるマリーナに、こんな人であったかと動揺したミルドであったが、ここは庶子であるが公爵家育ちであり、商会の会長相手の発言から何の情報を引き出したいのかを瞬時に引き出す。


「マリーナ商会ですか?3年前、姉上にケーキの試作品を食べて頂いたときに許可をもらいましたが…?姉上が宣伝してくださったおかげで国外からの注文もありますよ。」


 んん?聞き間違いですか?わたくしの知らない間にわたくしの名前を使った商会が国外まで広がっている?どうゆうことですの?


 この女、久しぶりに食べたケーキのおいしさに夢中で弟の話を一切聞かず生返事を返していたのである。


「マ、マリーナ商会はその…なにを扱っていますの?」

「姉上から教えてもらったものですね、姉上がお茶会で出されるお菓子類やお茶、石鹸や化粧関連と下着、姉上が着ているドレスもそうですね。」


 わ、わたくしが前世の知識を生かして内政チートしないようにしていたら、弟が代わりにやっていた件。過ぎてしまったことは仕方ないですが、アリーについて聞かないといけませんわね。


 この脳死女、マリーナ商会で作られた商品を着たり、使用したりする姿をパーティーやお茶会で自慢するためファッションリーダーとして君臨していたりする。まあ、本人は知らないことであるが。


「あ、あの。アリーさんとはどうなっているのでしょうか。」


 あまりの衝撃に庶子である弟に敬語を使ってしまうマリーナ。


「ああ、姉上の紹介で雇ったアリーさん?週末だけ受付をさせていますよ。可愛いし、うちの商品を使っているから使用感とか詳しくてね、結構人気な子になりました。」


 どうやらアリーさんとミルドの関係は従業員とその社長どまりのようですわね。これならなんとかなるかもしれませんわ。


「そ、そう!!ミルドもアリーさんのことを好いているのではないかと思いましたが、大丈夫そうですわね。」


「ちょっと待って姉上!!ミルド”も”って言いました!?僕のほかにもアリーさんを好きなひとがいるってこと!?」


 血相を変えてマリーナ迫るミルド、その様子が先ほどまでのマリーナと重なる。庶子といえども半分は血が繋がっているだけあって恋愛面で暴走しがちなところは同じである。


「へ!?ちょっと、ミルド近いですわ!!知りません!!知りません!!アリーさんのことを好きな人なんて知りませんわ!!」


 主人公と王子様のカップルが見たいためにアリーの周りの男(ゲーム内のキャラ)を探っているマリーナは攻略対象キャラの誰もがアリーのことを好いていないのは確認済みである。まあ、だいたいマリーナのせいなのであるが。


「よかったあ、可愛い人だし恋人がもういるんじゃないかと思ってたよ。ただなあ身分差がなあ。」


 ふーーーーん?つまり、両想いだ…と…。わたくしが悪役令嬢をやれば結ばれるという簡単人生計画は無意味でしたの?


 この頭お花畑女、世間では全貴族令嬢の救世主であり、マリーナ商会という世界に通じるような自分のブランド商会を立ち上げるファッションリーダーであり、古典派文学者と悪役のあもないのだが大丈夫なんですかね?


「身分差!?身分差で恋を諦めるんですの!?駄目ですわ、好きな子にはどんと行きなさい!!」


「姉上!!聞こえていたんですか!?僕は庶子だし、相手はれっきとした男爵令嬢ですよ。」


 これは、半分諦めていますわね。この世界の庶子は成人までは貴族として扱われるのですが次期当主として確約されていない人に関しては成人とともに平民へ落されるのですわ。アリーさんは庶子ではなく正室である母と男爵である父のもとで生まれた歴とした男爵令嬢です。そんな子をいくら公爵家に連なっていた平民でも結婚は難しいですわ。


「そんなことありません!!恋は身分で決まるものではありませんわ。大事なのはその人の気持ちですわ!!」


 転生前の恋愛の価値観が抜けていないマリーナ。王族と男爵令嬢をくっつけようと画策している人間が貴族間の恋愛模様を正しく把握しているわけがない。


「わかりました姉上!!姉上が学校にいった際にアリーさんにこの手紙を届けてください。」


 ミルドはそういってきれいな紙に赤色の押印がされた手紙を差し出す。マリーナは押印がなにを表しているかはわからないがマリーナ商会のものだろうと推測した。


「このお姉ちゃんにまっかせなさい!!オーッホッホッホ!!」


 人に頼られるという前世であまり経験のなかったマリーナは上機嫌で馬車を学園に走らせた。馬車のなかで一人になったことで冷静になったのか急に頭を抱え始める。


 勢いで任せなさいとか言ってしまいましたわ…。これじゃあ王子ルートじゃなくてミルドルートの開園ですわ?はぁ…。転生したとき生で押しカプがみられると思っていたのですがもう見られそうにありませんわね。


先ほどまでの威勢のよさはどこへ行ったのか、マリーナは少し虚ろな目で学園につくとアリーにミルドからの手紙を渡した。


「お姉さま?顔色がよろしくないようですが、大丈夫ですか?」

「え、ええ。大丈夫ですわ学園と屋敷を行き来したので少し疲れましたの。あ、これ弟のミルドからあなたに手紙ですわ。」

「ミルド様から!?あ、ありがとうございます!!」


 手紙をもらったアリーは頬を赤く染める。そのあと、ご褒美を目の前にした子犬のようなキラキラの目でマリーナを見ている。


「こんな短い時間で…すごいですお姉さま!!ありがとうございます!!」


 なんですの!?こっちにそんな目でみてくださいまし!!むぅ、この様子ならアリーさんはミルドのことを本当に…。はぁ、これからわたくしは何を糧に生きていけばよいのでしょうか。


あ!!ミルドの姉特権を使って二人の仲がどうなってくのか近くで見るのもいいですわね。わたくし以外知らない特別ルートって感じがしますわ!!いや、でもう~ん。やっぱり自分の推しカプを生で見られないのは心に来ますわね。


「マリーナ今大丈夫だろうか?」

「あら、王子。今ちょうど終わりましたの。どんなご用事で?」


 アリーさんのことを考えていて、落ち込んでいたら王子様が話しかけてきましたわ。金髪碧眼のクール系王子様なのですが、ルートが確定した瞬間にデレ始めるのが魅力的なんですわよね。まあ、やりすぎて飽きてしまった部分もあるのでわたくしにやられてもあまり興奮しないというのが欠点ですわね。


「誰もいないところで話したいのだが時間は取らせないから。」

「わかりましたわ。さあ、行きましょう。エスコートしてくださる?」

「もちろん。」


 王子の腕に絡みながら考えてみますが二人だけの内緒話の内容が予想できませんわね。政治の話でしょうか?わたくしの家は公爵家ですしわたくしから裏工作を頼みたいとかありえますわね。


「王子、そろそろ話してくださいます?」


 わたくしがそういうと王子様は何やら緊張した面持ちでわたくしに切り出す機会をうかがっているようですわね。


「あ、いや…。うん。」

「何か歯切れが悪いですわね。はっきり言ったらどうですの?」


 王子様はクール系のため口数は少ないですが王様の教育なのか言いたいことは堂々と言ってらっしゃる方ですわ。そんな彼が話を切り出せないなんてよっぽどのことがあったのでしょうか?は!!まさか王様暗殺…?


「私もマリーナも1年後の今頃は卒業することになるだろ?俺は卒業すると本格的に政務に関わることになって忙しくなる。」

「はぁ、まあそうですわね?」


 なにを当然のことを言ってらっしゃいますのやら。でも、王子様ルートになると初めての仕事は政治ではなくて魔王討伐になるのですけれどね。


 「だ、だから、卒業式と同時に私たちの結婚式を挙げたいのだが受け入れてくれるかい?」


 ん?このセリフどこかで聞いたことが…あ!!王子ルート確定ボイスですわ!?

 

 そ、そんな…。ここでOKをだせば推しカプをおかずにおいしいご飯を食べる人生計画が完全に断たれてしまいますわ…。しかし、現在、主人公であるアリーさんは弟のミルドと両片思い…そして、王子はわたくしにルート確定ボイスで告白してきた…。はっきり言って詰んでわすわ!!負け確ですわ!!


 わたくしの人生…どうしてこうなったんですのーーーー!!

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乙女ゲーに転生した私は推しカプを作るために悪役令嬢になってみせますわ!!「オーッホッホッホ!!」え?……あら? 嘉矢獅子 カヤ @megarashi

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