キャプチャー2『気球の星』

気弱な少女

「う、ひっく……うぅ……っ!」

気だるげな少年

「泣くなって。」

静かな少年

「……どうやって出るか。」

落ち着いた少女

「……あちらの扉は。」


 閉じ込められた部屋には、扉が2つある。1つはあの閉じられた鉄の扉で、反対側には木の扉がある。鉄の扉はびくともしなかったが、木の扉はあっさり空いた。

 中は、倉庫だった。箱が乱雑に積まれている。長らく放置されていたのか、酷く埃っぽい。

 少年少女は、一先ず箱を漁ることにした。手を動かしながらも気を紛らわせるための会話をしていると、全員が同じ星から来た訳ではないということがわかった。

 めぼしい物は見つからなかったが、箱を動かしていく内に、通気口を見つけた。


気だるげな少年

「お、ゲームで見たことある。ここから出られるんじゃない?」


 通気口の中は、やはり埃っぽかった。しかしそれだけで、普通ならあるはずの蜘蛛の巣などは見当たらなかった。

 薄暗かったが、進む内に段々と光が強くなり、声が聞こえてきた。


教師

「今日の授業はここまで。明日はプールがあるので忘れないように。」


 少年少女は声が聞こえなくなってから通気口を出た。

 そこは、学校の教室らしき場所だった。冷たい金属の壁に窓は無い。扉は1つしかなかったので、周囲を警戒しながら外に出た。

 廊下は薄暗く長かった。一方から声が聞こえたので、少年少女は反対の道を進むことにした。


 突き当たりに大きな金属の扉があったため手をかけると、予想を外して簡単に開いた。

 中は、プールだった。天井の電気が付いているため多少は明るかった。

 これが先程話に出てきたプールかと思っていると、なにかの影が通った。


心優しき少年

「……犬?」


 茶色の大型犬のようなものが、プールの反対側に居た。暫くこちらを眺めた後、フッと姿を消してしまった。


 少年少女は手分けして『学校』の探索を行った。最も収穫があったのは『図書館』で、『気球の星』についての情報が集まった。


 この星は、巨大な気球だ。『球皮』『バーナー』『バスケット』の三層で構成されている。

 『バスケット』で燃料を作成し、『バーナー』で燃料をエネルギーに変換し、『球皮』はエネルギーを使用して『気球の星』を浮かす。三層にはそれぞれ『守護者』がおり、住民は守護者を崇めながらそれぞれの場所で仕事を行っている。


 そして、少年少女にとって最も重要な情報も手に入った。

 『気球の星』には、よく他の星から『落とし子』と呼ばれる者達が落ちてくる。『気球の星』の住民は、この『落とし子』を捕まえ、燃料にしているらしい。少年少女も、あの狩人に燃料として連れてこられたのだ。

 また、元の星に戻る方法は見つからなかったが、いくつかの絵本に星が落ちたら大変なことになる、と書いてあった。


 少年少女は燃料になるつもりはない。でも元の星に戻る方法もわからない。戻れないかもしれない。でも、このまま燃料などになりたくない。

 少年少女は幼い子供だった。子供ながらの考えに至った。

 せめて、ひどいやつらに仕返ししてやろう、この星を落としてやろう、と。


 少年少女は彷徨い、階段を見つけた。エレベーターは誰かと鉢合わせた場合に逃げ場がないと判断したためだ。

 かなり長い階段の途中で、開けた場所に出た。まだ地上ではないらしい。

 そこは商業施設のようで、多くの人がいた。少年少女は身構えたが、住民達は皆少年少女と似たような貫頭衣を来ていたため怪しまれなかった。

 少年少女は話し合い、少しだけ見て回ったらまた階段を登るという結論に至った。


気の強い少女

「うーん、商店街……か、お祭りの屋台みたい。特に何もなさそう。」

屋台の店主

「お、嬢ちゃん達、学校帰りかい?丁度良い、これやるよ!えーっと、9人分だな。」

気の強い少女

「えっ、でも、お金持ってないわ。」

屋台の店主

「オカネ?なんだそれ、聞いたことないぞ?」

聡明な少年

「っ、もらっていいんですか!?」

屋台の店主

「おう、いいぜ。」

聡明な少年

「ありがとうございます。……離れるよ!」


 途中で危ない場面もいくつかあったが、少年少女はお互いにフォローし合った。

 屋台の店主にもらったお揃いのブレスレット以外には収穫がなかったので、少年少女はそのまま階段を駆け上がっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る