第51話 死闘~ 鮫島 龍仁 VS 馬【中編】

「はぁ、はぁ‥‥‥つかあてとはナメたマネしやがる」

 鮫島はゆっくりと立ちあがり、切っ先を馬に向けた。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


「おいどうした、来いよ」


 馬は肩に乗せた太刀を下ろした。


 と、その時、、、




—―———「‥‥‥‥ワレワレノ ジャマヲ スルナ」




(!?)

 鮫島は息を呑んだ。

 今コイツしゃべったのか!? いや、聞き間違いか!?、と耳を疑った。


 しかし、間違いなく馬はしゃべったのだ。

 その声は、歪なマスクの間隙を縫って出たような重々しい声風で、心臓を鷲掴みされた感覚になった。


「へぇ驚いたな。お前、しゃべれんのかよ」


「ジャマヲ スルナ」


「お前らの目的はなんだ!?」

 鮫島は強い口調で言う。


「コレカラ シヌ オマエニ コタエルヒツヨウハ ナイ」


「なら、力づくでもしゃべらせるぞ」


「オマエラニンゲンハ ドウグニスギヌ‥‥」


「?」


「ワレワレ シンカノ ドウグ‥‥」


「道具だぁ!?」


「ワレワレカラハ モウニゲラレナイ」


「ここはただのスーパーじゃねぇのはわかってる。お前らの実験施設なんだろ!?」


「ワレワレハ ノタメ カンゼンナルニクタイヲ テニイレル」


「テンカイ? なんだそれ。わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ」


「オマエラ イキノコリハ ゼンイン シマツスル」


「へぇ、やってみろよ」

 鮫島の眼つきが変わった。眼中は殺意に満ち溢れている。


「オマエ ドウグノナカデハ イチバンコワシガイガアル ヤツダ」


「この俺を道具扱いね。ナメてやがるなまったく」


「コワレニクイドウグホド ワレノチカラトナル オマエニ レイヲイウ」


「礼を言われる筋合いはねぇ。ここを早く解放しろ」


「ムリダ‥‥」


「もう一度だけ訊くぞ。ここを開放しろ」


「オマエヲ コロスノハ オシイ‥‥」


「答えになってねぇよ。イカレ野郎」


「オマエホドノニンゲンヲ コロスノハ オシイ ト モウシテイル」


「いつでも殺せるみたいな言い方だな」


「ワレワレノ ケイカクニ オマエモ キョウリョクスルナラ オマエダケ イノチハ ノコシテ ヤル」


「計画!?」


「ワレワレト トモニ コイ」


 鮫島は俯き、黙り込んだ。

 まさか、馬から交渉をしてくるとは思いもよらなかった。

 数秒間考えた後、

「へぇ。面白れぇじゃん」

 そう言った。


「ハナシノ ワカルヤツダ オマエ ナハ ナント イウ」


「鮫島、龍仁」


「サメジマ‥‥ リュウジ‥‥ ソウカ キニイッタ」


「俺は何をすればいいんだ」


「ココニイル ヤツラ ゼンイン コロセ‥‥ アラタナドウグト コウカンダ‥‥」


「始末‥‥すればいいんだな」

 鮫島は刀を握る手に力が入る。


「ソウダ‥‥ サメジマ」





—―———「わかった」






「デハ トモニ マ‥‥‥」

 馬がそう言いかけたその時、、、


「————っと、その前に条件がある」

 鮫島は馬の言葉を遮ってそう言った。


「ナンダ‥‥」


「俺をお前ら組織のトップにしろ。あと、お前らのその計画の黒幕はてめえに始末してもらう。俺が協力するのはそれからだ」


「イミガ ワカラナイ‥‥‥」


「そうか。それは残念だ。お前がまだ完全体の肉体じゃねぇから仕方ねぇか」


「キサマ‥‥」


「お前のちいせぇ脳みそでもわかるように説明してやる。俺は誰の指図も受けねぇ。誰の下にもならねぇ。俺を仲間にしたいなら、俺をトップにしろって言ってんだよ」


「‥‥‥‥‥‥‥」

 鮫島は馬の雰囲気が変わったのが一目でわかった。フシュ―ッと溜息が漏れている。


「どっちなんだ? 俺の条件を呑むのか、呑まないのか」


「オロカナ ナゼ ソコマデ アラガウ‥‥」


「お前らがイカレてるからだ。バカ野郎っ!!」

 鮫島はグレー色のジャケットを脱ぎ捨て、斬られたインナーシャツも破いた。

 筋肉質な上半身が露わになった。

 傷口からは痛々しく血が出ているが、首から胸部、腕、腹部にはアラビア文字のようなタトゥーがより鮫島の存在感や威勢さを引き立てている。

 背中には太陽と三日月、腰には方位磁石のようなデザインのタトゥーが入っていた。



「ミズカラ シヲ エラブトハ‥‥ ヤハリニンゲンハ オロカ ダナ」


「条件は呑まない、ということだな?」

 鮫島はかっと目を見開き瞳孔が開いた。


 そして、重心を落とし、左足を前に出し、頭の位置で刀を構えた。

 攻撃でも防御でもどちらでも対応できる構えである。切っ先はしっかりと馬に向けられている。


「ムロン サメジマ コロ ス」

 馬も重心を落とし刀を構えた。そして、馬は太刀を頭上に逆手で構えたのだ。左腕は鮫島に向けられた。


「始めっからイカれたお前らと、組むつもりなんざさらさらねぇよ」


「ソノブジョク シヲモッテ ツグナッテ モラウ ゾ」


「お前らに未来はねぇ。ここで殲滅する」




第52話 【鮫島戦 後編】へ続く・・・。

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