334:エピローグ

ざざあ、と海の波の音が聞こえる。


 あの後、彼女はまるで憑き物が落ちたかのように大人しくなった。かつて付き合い始めたころのような、初々しさがあった。


世界は、大きく再生された。


 かつてあったような、男女差による魔力操作のレベル差がなくなり、男性にも高レベルの加護が生まれるようになった。そのことで男性の地位が少しずつ上がっていると、かつての知り合いから聞いた。


 それでもまだ男尊女卑な世界の仕組みは根深く、変わっていくには時間がかかるだろう。


 魔物と人間の共存にしてもそうだ。中には知能が高く人間に溶け込める魔物もいるだろうが、多くの魔物は人間を見たら襲ってしまう。ここら辺は世界が変わっても、中々変わらない部分かもしれない。


 ようやく前世の縁が切れた俺は、そんな人間社会のシガラミが嫌だった。俺はある女性に声をかけ、一緒に住もうと提案をする。


 かつて、ダークエルフの里を訪れた際に見た海。そこに家を建て、今は一緒に暮らしている。少しずつ俺を慕っていたやつが周辺に住み始め、今では形ばかりだが街のようなものが形成された。


ざざあ、と波の音が心地よい。


「あなた、今日はゾネさんが来る日ですよ」


「ん……ああ、そうだったな」


 彼女に声を掛けられ、椅子から立ち上がる。


 ゾネは相変わらず俺にベタベタなのだが、そろそろ結婚でもしないのだろうか。中々骨のある男性が少ないので、彼女の目に敵うやつがいないのも問題だ。


ふと、振り返り海を見る。


 あれから精霊は顔を出してこない。きっと二人で、イチャイチャしてるのだろう。


「あなた?」


「ああ、今いく」


 俺は彼女に振り返る。まあ、こうしてスローライフが送れているのは、セイレーンが、スルトを許したおかげだ。俺は彼らに感謝をしつつ、彼女のもとまで足を運び、彼女に囁く。


「愛しているよ」


 俺は、彼女にそう呟いた。

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前世で妻に殺された俺は今世では大人しい女の子と結婚したい。~女尊男卑な世界で俺は強くなって生き残る~ naosan @supernaosan

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