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最近、魔物側からの侵攻が弱く順調に領土を広げていた。
魔物側も、決して攻勢を緩めたわけではないのだが、何か勢いを感じない。まるでこの時は持久戦を選び、後の訪れる援軍を待っているかのような。獲物が通るのをじっとして待ち構えている動物のような、そんな静けさだ。
「うまく行き過ぎているわね……」
魔物からの侵攻がないからといって、前線を押し上げるスピードが劇的に上がるわけではない。結局、伐採を繰り返していく必要があるため、一日に進める距離というのはある程度決まっている。
魔王が、前線に出てこないことも不可解だ。相手からのアクションがなさすぎるため、何か大きな間違いを犯しているのではないかと不安になる。
「エッダ様、少しお疲れのですか?」
「いえ、そんなことはないのですが」
部下にも心配されるほど、私は不安な顔をしていたのだろう。こういった気持ちは伝染することが多い。改めて、今の作戦を見つめなおす。
決して落ち度はないはずだ。
勿論、ドラゴンが来て暴れれば、壁を立てたところで意味はないかもしれない。それでも有象無象の……そうゴブリンなんかは魔物の領域に追いやれる。それだけでも今のこの状況を打破できる作戦は、理にかなっているはずだ。
あまりに魔物側に動きがないため、心配になってしまっているが問題ないだろうと、心を落ち着ける。
(どうにかして、魔物側の情報を集められないでしょうか)
彼女は一人、叶わぬ願いをする。
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