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「あの、これを……」


「ん?」


 現在、ローレライのメンバーは前線都市に留まって、魔物の討伐をしている。


 ローレライは武力や知力など、あらゆる面でのエキスパートが揃っている。そのため、こういった場所で長く滞在するということは少なく、物珍しさから野次馬をしに来る住人もいる。


 そして彼女たちは、憧れの的でもある。


「これをエッダ様に……」


 時折こうして、ファンレターのようなものを貰ったりすることがある。目の前にいる成人しているが、少し童顔の顔立ちの男性は花を一輪添えて手紙を渡す。


「ああ、渡しておこう」


「ありがとうございます!」


 男性は、満足して帰っていく。応援してくれることは嬉しいが、正直今はこうしたものを貰っても読んでいる暇はない。恐らくそのまま紙屑となるだろう手紙に目をくれる。花を添えることで他とは違い、目に留まる可能性もあるが、まあ多分見られないだろう。


 彼女は貰った手紙を、そのほかのファンレターが置いてある机の上に無造作に置いた。

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