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馬鹿なゴブリンが隔離された。


 俺はこいつらとは違うのだが、まあこれで紛れられるならいいかと思い、放置している。


 中堅ゴブリンが何度か来て、排泄の場所や仕方を指導している。


 こいつらは、決められた場所で排泄もできないのか、馬鹿すぎるだろ。


「ぎゃぎゃ(おい、おまえ)」


「ぎゃぎゃ?」


「ぎゃぎゃ(おれが稽古つけてやる)」


「ぎゃぎゃ」


 近くにあった木の棒で、近くにいたゴブリンと稽古をする。まだレベルが上がっていないゴブリンは、コテンパンにやられる。


(よし、この中でなら天下を取れる)


 俺は、次々に他のゴブリンに勝負を挑みにいく。


 戦場に駆り出されることが少なくなり、しばらくこいつらと戦闘を繰り返す。繰り返しているうちに、少しずつ木の棒の使い方もうまくなり、本当に少しずつ強くなっていった。


 そして俺は、そこで天下を取る。


「ぎゃぎゃ(リーダー、食事です)」


「ぎゃ(おう)」


 下の者から食事を奪い、少しだけ豪勢になった食事を貪る。心なしか、体格も少し良くなった気がする。


 そんな生活を続けている時、ボスがひょっこり顔を出した。


(まずい!)


 ボスは、ゴブリン担当のアルノーと一緒に、この隔離場所を訪れた。一体こんな底辺みたいな場所に、どんな用があるのだろうか。ボスがこちらを向く。緊張で体が強張る。


「……あいつでいいんじゃないか?」


「はっ!」


 俺を指さし、ボスが去っていった。あぶねぇ……漏らすところだったぜ。


「おい、そこのゴブリン」


「ぎゃぎゃ(おれですか)?」


「そうだお前だ。お前はこれから、ここのゴブリンのリーダーをやってもらう。仕事は、ここのゴブリンを強くすること。それと、排泄する場所を教えることが仕事だ」


「ぎゃぎゃ(はい、わかりました)……」


 ボスには、俺が知能が高いゴブリンだと見抜かれてしまっていたようだ。少し面倒くさい仕事を頼まれたが、ボスからの頼みなら仕方ない。やっていることも、今と大差ないしな。


 そうして、知能の低いゴブリンと指揮する、ゴブリンリーダーが決まった。

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