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俺はゴブリン。名前はまだ無い。
俺たちゴブリンは、生物上最弱とされているらしい。というのも、人間種になら腕力で勝てるものの、魔法を使った人間には負ける。それもそのはず、ゴブリンは魔法が使えない。使えるほど、頭良くないからである。
隣のゴブリンを見る。
見るからに、頭の悪そうな顔でボーっとしている。俺も、こんなやつと同類なのかと思うと、悲しくなってくる。
俺は、こいつらとは違う。正確には、今は違う。前回の戦いで運よく人間を殺した俺は、レベルが上がり知識を得た。
(こいつらと俺は違う……!)
この領地でゴブリンは、潰しのきく消耗品として戦場に駆り出される。性行為も禁止され、娯楽もないなかで、使い潰しのように使われ死んでしまうなんてまっぴらだ。
俺は、生き抜くためにどうすればいいかを考える。
まずはゴブリン担当の人間、名前をアルノーという。
あいつに媚を売ってもダメだ。死ににくい場所に派遣される可能性もあるが、結局現状を打破することはできない。ゴブリンという立場から脱却は難しい。
次に、ゴブリンの中でも中堅を担うようなポジションにつくこと。
他の雑魚なゴブリンを指揮する立場になれば、俺が危険な最前線に立つことも少なくなる。これも結果として死ににくくなるかもしれないが、責任も一緒に背負うことになる。もし失敗してしまった時のリスクを考えると、あまり好んでなりたいとは思わない。
となると、ある程度自由がきいて、自分の裁量と実力で生き残れるかどうかが決まる場所。
(……この雑魚ゴブリンの中に紛れ込んで、うまいことサボるしかない!)
頭が良くなったとはいえ、ゴブリンはそこまで知能は高くない。
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