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お手製の弁当を広げ、地面に腰を下ろす。彼女は、結構料理もするようで、見た目はとてもおいしそうに見える。彼女に倣って、隣に腰かける。
確かに最近は、色々と考えることが多かったかもしれない。こうして、改めてゆっくりする時間も必要かもしれない。
拠点のこと。
総力戦のこと。
そして恋愛のこと。
こうして綺麗な風景や、小川の癒される音を聞いているのに、結局そのことを考えている。休みの日なのに、仕事のことを考えてしまう社会人か。
そんな頭のモヤモヤを振り払うために、彼女が作った弁当に手を伸ばし食事をする。
「そういえばシューベルト。私、あなたに謝らないといけないことがあるの」
ドキリとする。考えていなかったが、彼女は総力戦に協力してくれると思って、説得を後回しにしていた。
「あなたと、初めて会った時のことよ」
「……ああ」
あの時のことか。そういえばあの時も色々あったな。
「あの時は、前の人の印象が残っていて……あなたはあなたでしかないのに、あなたに怠惰であることを望んでしまったわ。ごめんなさい」
「……別に構わないさ」
もう、あの時のことは過去のこと。
「あなたに何かを求めてしまった当時の私は、あなたを愛する資格がなかったわ。勿論今は、あなた自身をそのままで愛している自信はあるの」
――うっ。
くらりと目まいがする。まずい……
「ミア……!」
「だからこれは、私があなたに求める最後のわがまま」
意識をここで失うのはまずい。必死に食いしばるが、もう眠気の薬が体中に回っている。
「ごめんなさい」
俺は、そのまま意識を失った。
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