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「ほら、飲みなさい」


「うう~、もう飲めません~」


 私は、ゾネさんと酒を飲んでいる。なぜこんなことになっているかというと、グルヴェイグから頼まれたからだ。


『お願い、今夜だけ彼女を引きつけておいてくれない?』


 それは、何かを決意した目つきだった。きっと、今夜あたり何かアタックを仕掛けるのだろう。この場所にいる女性の中は、ほとんどの女性が王に好意を寄せている。その中で私は、尊敬こそすれど、他の人に比べると好意というものは強くない。残念ながら成人男性は対象外だ。


(だからこそ、頼んできたのだろうけど)


 決して報酬の酒に釣られたわけではなく、彼女と少なからず友人であり、応援しているからこそ協力をした。学術都市でくすねてきたという、秘蔵の酒だから手伝っているわけではない。


「うーん、うーん」


 安酒を、しこたま飲ませ酔わせる。それだけで、おいしいお酒が飲めるのなら安いものだ。


「うーん……はっ! なにか、お兄様に危険が及んでいる気がする!」


「え?」


「私の妹力が、お兄様の危険を察知している気がします!」


 なんという勘だろうか。妹力とはいったいなんだ。


「まあまあ、こんな場所で危険があるわけないじゃない。さあ、こっちのお酒も飲みなさい」


「くっ! 私はお酒の誘惑に負けない……あれ、このお酒はおいしい」


 やむを得ず出した秘蔵のお酒をグビグビと飲む。ああ、後でゆっくり飲もうと思っていたのに……


 結局、朝方まで飲み明かすことになった。この貸しは、高い酒一本じゃ足りないね。

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