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「俺は、しばらく戦う気はない」
魔王城跡地。
といっても魔王城自体は魔王が暴れたため、ほとんど原型をとどめたままだ。被害にあったのは、城下町である。そんな魔王城を訪れ、魔王を訪ねた。
「まだ、先の傷が癒えていない」
じっくりと魔王の体を見るが、傷らしい傷など見当たらない。
「心の傷だ。俺が、何年もかけて作った街を壊された心の傷が癒えていない」
「なにいってるんだ、お前」
そもそも、あんなボロボロの放置されたような城下町を街だと言い張る、こいつの傲慢さ。要はこいつは、外に出たくないだけなのではないか。
結局、魔王はその後の説得空しく、戦わないの一点張りのため諦める。長いこと生きていると、動くことが億劫になるのかもしれない。
(しかし、当てが外れたな)
魔王が出てくれれば、戦力強化に一役買えたのだが。最近、こちらに逃げてきたドヴェルグ達も、どちらかといえば戦闘には消極的だ。魔物の中には時折こうして、人間との戦いに消極的な種族がいるらしい。
過去に、なにかあったのか。
戦うことに、意味を見出せないのか。
どちらにせよ、戦力の補充は未だ十分ではない。
(まずいな……)
最前線では今、人間側がかなり力を入れているらしい。少しずつ侵攻されている状況に、少しだけ焦りがでる。
学術都市を落としたことで、人間側が本気でこちらを排除しに来ている。
そして未だ、目的の人物は前線に現れない。
(お前は一体、いつになったら出てくるんだ……)
未だ現れない待ち人に、苛つきが隠せなかった。
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