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 人間側の攻撃により二の足を踏んでいる現在、迂闊に手を出せなくなった魔物側。そのため、今人間と魔物が小競り合いをしている場所は、最前線都市のみとなっている。くしくも、魔物の大暴走が起きる前と同じ状況になった。


 そして最前線には今、ローレライの精鋭や、四芳姿が参戦しているため、少しずつ押されている状況となる。


 森は切り倒され、少しずつ人間の領域が増えていく。


「空の動きは?」


「今のところ、敵影なしです」


 彼女たちが警戒するのは、魔王の襲来。あの巨体であれば、遠くから飛んでくればすぐにでも気づける。空の領域は、未だ人間には届かぬ場所のため、空を飛ぶことができる竜種に襲われた場合、なすすべがない。


「ドラゴンは私と同等か、それ以上の力を有してます。警戒を怠らないように」


「はっ」


油断は、決してない。


 しかし、いつまでもこうして前線に立っていることも出来ない。


「もう少し押し込めれば、魔物側の侵攻ルートの多く潰せます。三か月以内に、そこまで侵攻しましょう」


 両脇に、大きな山が広がるその場所まで押し込めれば、簡単に魔物側は侵攻が出来なくなるだろう。それこそ壁でも立ててしまえばいい。むしろ今までの人間がそれをやっていなかったことが問題なのだ。隣に魔物がいるという状況は、常に死と隣り合わせの状態だ。倒せるから、と手を後回しにしていたことが、今問題となっている。


「もう少しです……」


 少しだけ、終わりが見えたこの戦争に、胸を撫でおろす。


 人間側の前線を押し切るまで、残り3ヵ月。

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