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「私、あなたのためなら命を差しだせるわ」


 場所は拠点内、時刻の針は昼下がりの12時過ぎを差していた。


 先日、人間側から侵略があり魔王城が襲われた。それから、情報収集を進めるが人間側の大きな動きはなく、つかめた情報は魔王に手傷を負わせた。といった内容のみだった。


 人間側の動きの意図が読めず、情報収集に努めているが未だに何故魔王城を攻撃したか理由が掴めていない。


 そんな状況下で彼女、ヴァン神族のグルヴェイグは作戦会議中に上記のような発言をした。


「なにを――」


「そのままの意味よ。私が、命を懸けて情報収集してきてもいいわ」


「はいはーい! 私も、お兄様のために命を差しだせまーす!」


 妹が、何故か対抗心を燃やす。


「……却下だ。今のところ、何かを犠牲にするほど切羽詰まっていない。加えて、戦力が悪戯に削れることを俺は許可しない」


「そう……」


 彼女が小さく返事を溢す。


 そう、今は焦るタイミングではない。どちらかといえば、こちらが押している状態だ。この状態を維持し続け、少しずつ戦力を削っていけば、いつか人間の最高戦力まで手が届く。


「お兄様! 私もお兄様のためなら何でもしますから、言って下さいね!」


「――、――。」


「分かった分かった。ありがとう」


 妹の声にかき消され、グルヴェイグがボソリと言った言葉は、彼には届かなかった。

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