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報告書では前線に残り、魔物を討伐すると書いた。
だが実際は少しだけ違った。
大事な相棒のベディを燃やされ怒り、その後の戦闘でもかなりの消耗をしてしまったため、正確にはあまり魔物討伐を積極的に行っていない。
「はあ……」
片腕を失った人形をみて、少しだけ涙が出る。戦闘中に思わず口が悪くなってしまうくらいには、怒っていた。この人形は幼い時からずっと一緒にいたが、ここまでボロボロになったのは初めてだった。右手が無くなった後の戦闘でもかなり疲弊し、少し擦り切れている。
コンコン、と宿屋のドアがノックされる。
いつまでも落ち込んではいられないので、気持ちを切り替えて対応をする。
「エッダ様、こちらはどうしましょうか」
入ってきたのは、一緒に城下町まで行ったローレライのメンバーだった。
「これは……」
彼女は私とドラゴンの戦闘が終わった後に、戦闘があった場所にいきドラゴンの鱗を拾っていたらしい。その赤い鱗は魔王を連想させ、人形の右腕を奪ったにっくき相手を連想させる。
クッ! あのドラゴンめ……
今回は作戦上、継続的な戦闘が難しかった。次に会った時はギタギタにしてやると、心に誓う。
「もしよければ、こちらで人形の右手を補強してみてはどうですか?」
正直、その提案はとても気が進まない。憎き相手の鱗を、人形の右手につけるのはどうなのだろうか。しかし、そんな感情の部分を言っていられない反面もある。ドラゴンの鱗をつけることで、人形は明らかに強化されるという実利的な一面もある。
「ぐぐぐ……仕方ありません。そうしましょう」
その人形を見るたびに、自分の反省も思い出せる。次に会った時に万全な状態で挑むために、その提案をのんだ。
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