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報告書を読む。
『魔王が彼ではない可能性について』と書かれたその報告書には、戦闘の詳細が書かれている。この報告書は、他の人間に読まれるわけにはいかないため、極秘資料として追加で報告者が持ってきた。
通常の報告書では、魔王城まで攻め込んだこと。そして魔王が出てきて、彼女の人形がブレスにより一撃で焼かれたこと。その後、戦闘になり多少魔王に手傷を負わせたことが書かれている。
そして極秘資料には、魔王は彼ではなかったと書かれている。
(私たちの勘違いだった……?)
まだ、一般に公開する前だったことを良かったと思うか。
多少なりとも、彼が魔王である可能性を広めてしまったことを悪いと取るか。
魔物の大暴走の全貌が見えそうだっただけに、この事実は私たちの足を止める。迂闊に動けなくなった。
魔王がやったかどうかわからないが、この結果を狙ってやったのだとしたら、今回魔物を先導しているものはかなりの切れ者だろう。そう予測ができる。
「……エッダは、前線で少しでも魔物を減らすために残ってるのね」
ぽつりと独り言が漏れる。本当は、誰かと相談して事件解決に持っていきたいが、今彼女と同等の立場にいる人間はいない。
私にできることは、引き続き情報を探ること。そして、各街の防衛に努めることくらいだろうか。今残っている街は比較的大きな街も多いが、学術都市の例もある。大きい都市だからといって油断はできない。
「まずは、学術都市で仕事にあぶれてしまった優秀な学生を集めましょう」
学生の発明品が、人間側の希望になる可能性だってある。
「次に戦力ね。今まで基準に達していないと切っていた人材も確保が必要ね」
訓練を積めば、ある程度戦力になりえる。そんな人材を広く募集することにする。
「セイレーンにお願いして、加護の高い子を増やして貰おうかしら……」
次を担う若者を待つ。魔物の侵攻により人間の数も減っている今、それぞれの質も大事だ。
「……ついでに彼の行方も探しておきましょうか」
一体彼は、あの闘技大会以降どこで何をしていたのか。当初の考えを、そのまま貫いた策も立てておくことにした。
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