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 怪しまれてはいけない。盗賊の女がこちらに近づいてくる。


「おや、こんなところに外からの人間とは珍しい」


「……お前たちはここで何をしている?」


「俺たちは、ここで暮らしてるんだ」


 できるだけ自然に笑う。ここで結果を出すことができれば、俺の生活環境は大きく変わる。村では立場が弱かったが、ここではその立場を変えることができる。それは既に、村の少年があの男に媚を売ることで実演していた。


(折角もらったチャンスを無駄にはできない)


 他のやつは、まだプライドが邪魔しているのか素直になれないやつもいる。今この場所で、権力を持っている人間に媚を売ること、そして立場をあげることが最重要事項となっていた。


「……お前ら犯罪者か?」


「あははは……」


 相手は盗賊団だ、安易に犯罪者を否定する発言は、相手の神経を逆なでる可能性がある。ここは無難に、笑ってごまかすことにしよう。


「ありがたいことに、ここはそんなに強い魔物もいない。良かったら一泊していくかい?」


 できるだけ自然に、相手に誘いをかける。


「ここは男しかいないのか?」


「あははは……」


 そんなはずないだろ、バカなのかこいつは。だけどもし、女がいないことをを深堀りされて、奥の建物でも散策されたら、今回の作戦がばれるかもしれない、笑ってごまかすことにしよう。


「悪いが貸せる女は少ないぞ、それでもいいか?」


 いい感じに誤魔化されてくれたので、乗っておくことにした。


「構わないよ、ここはご覧の通り何もない場所だから、なんでも嬉しいんだ。それこそ、人間の国の情報とかでも」


 そもそも俺は、妻一筋だ。お前のような露出の多い女、タイプじゃない。それよりも人間の国の情報が聞き出せれば、他のやつよりも一歩上にいけるかもしれない。何かポロっと溢さないだろうか。


 盗賊の女は、残念なことに情報を漏らすことは無かったが、一泊していく流れに持っていくことができた。焦るな、まだ終わっていない。


「じゃあ、こっちの建物を使ってくれ」


「ああ、ありがたく使わせてもらおう」


 ドアを開けたところで、天井に控えていたゴブリンが相手の意識を奪う。外のメンバーもゴブリンに、次々と制圧されていく。なんだかうちにいるゴブリン、そこ辺のゴブリン


「お前ら! 裏切ったのか!」


 裏切ったも何も、俺たちは最初から魔物側の人間だ。


「悪いが俺のために犠牲になってくれ」


 作戦の成功を実感し、笑みがこぼれた。

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