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 魔物の領域と言っても、一概にすべての場所が危険というわけではない。逆に強い魔物、ドラゴンなどがいる地域ではそのドラゴンに怯え、魔物自体が少ないこともある、


 盗賊団も、そういった危険な地域や魔物が多い場所を避け移動を繰り返す。


「あれはなんだ?」


 その場所を散策していると、明らかに異様な建物を見つける。周りには柵が建てられ、中では人間が働いていた。


「魔物の領域を抜けた? それとも人間はいつのまにか、このあたりまで侵攻が進んだのかい?」


「わかりやせん……」


 近づくべきか、避けるべきか悩む。勘では怪しすぎると分かっていても、食料も心もとなく、盗賊団のメンバーも疲弊してきている。チラリと盗賊団のメンバーを見るが、できれば屋根のある場所で休みたいと感じているのだろう。


 人間というのは知らないと何も思わないが、いざ目の前に餌がぶら下がると急に欲深くなる。目の前に明らかに人間が住んでいる建物が出たことで、空気が弛緩していることが分かる。


「……声をかけてみる。まずかったら戦闘もありえる、全員警戒はしておけ」


 頭領は、何人か厳選したメンバーでそこへ近づく。中の人物がこちらに気づき、声をかけてくる。


「おや、こんなところに外からの人間とは珍しい」


「……お前たちはここで何をしている?」


「俺たちは、ここで暮らしてるんだ」


 こんな場所で? お世辞にも安心できるとはいえないこんな場所で暮らす理由が分からない。


「……お前ら犯罪者か?」


「あははは……」


 笑ってごまかしているが、私にはわかる。こいつらの世界に絶望したような目は、普段から見ている。犯罪を犯し、人間の社会から追われ、こんなところまで逃げてきたのか。


「ありがたいことに、ここはそんなに強い魔物もいない。良かったら一泊していくかい?」


 同類だということは分かったが、決してそれは安心材料にはならない。チラリと、畑で働いている他のメンバーをみるが、全員男だった。


「ここは男しかいないのか?」


「あははは……」


 笑ってごまかしているが私にはわかる。大方、逃げ出したはいいが、男しかいないこの場所ではきっと溜まるものも溜まっているのだろう。あわよくば女を抱きたい、という性欲を隠しきれていない。ゲスどもが。


「悪いが貸せる女は少ないぞ、それでもいいか?」


「構わないよ、ここはご覧の通り何もない場所だから、なんでも嬉しいんだ。それこそ、人間の国の情報とかでも」


 なるほど。確かに追われている立場からすると、人間の動向も気になるのだろう。情報に価値があるなら、それを提供すれば問題ない。私たちにとっても大した痛手にもならない。安全が安価で確保できそうなので、残りのメンバーも呼び寄せ、柵の中に入る。


「じゃあ、こっちの建物を使ってくれ」


「ああ、ありがたく使わせてもらおう」


 建物のドアをあけると、お世辞にも綺麗とはいえない室内だった。屋根があるだけマシかと考える。その瞬間、衝撃が体に走り私の意識は途絶えた。

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