163
盗賊団の拠点
この盗賊団は、総勢30名ほどの盗賊団だ。あるものは村での待遇が気に入らずに、村から抜けて路頭に迷っていたもの。あるものは街で、犯罪を犯して逃げていたもの。ここにいる人間は出身も理由も様々なものばかり。
その荒くれどもをまとめあげるのは、女頭領のウラだ。ウラは以前、ローレライに所属するほどの強者だった。しかしそこで彼女は問題行動を犯し、追われる身となる。
彼女は少し変わった性癖をしていた。
「連れてこい」
彼女の前に連れてこられたのは、年端もいかない男女の子供だった。前回襲った村で、攫ってきた子供たちだ。
「お前ら、下がっていいぞ」
「へい!」
頭領のテントから出る。中からは、あまり聞きたくない音が聞こえ始めるので、さっさとテントから離れる。
「全く、頭領はあの性癖以外は完璧なのにな」
「ああ。男でも女でも実力があれば平等に扱ってくれるし、本人の実力も折り紙付きだしな」
どうも、成人男性は対象外らしく難を逃れている。村から連れてきた子供には悪いが、犠牲になって貰おう。
自分ではなくてよかったと、そんなことを思っていると前から斥候役の女が、こちらに向かってかけてきた。
「はぁ、はぁ。頭領は!?」
「あ、テントにいるけど……あ、おい!」
斥候は静止を聞かずに、テントの入り口を勢いよくあける。そこには、母性溢れた表情で子供に膝枕をしているボスがいた。
「あ」
「あ」
頭領の性癖は、子供を愛でることだった。普段の貫禄ある雰囲気からは想像もつかないほどだらしない顔をして子供を甘やかしている。その姿を見て、ゾゾゾと鳥肌がたった。
その後、ボコボコに殴られた斥候役の女からの報告を聞く。
「囲まれてるだぁ?」
「は、はい……」
話を聞いてみると、どこかから情報が漏れたらしく、森が既に囲まれているらしい。
「どうしますか、頭領」
「……逃げるぞ」
情報を聞く限り、首都の精鋭だろう。それが見えるだけでも数人、森を囲んでいる。本体は別にあるとして、頭領レベルの強者が何人いるか分からない。
「少し派手にやりすぎたか……」
「頭領が子供を攫ってくるから……」
「あ?」
小言をいった斥候役の女が睨まれる。確かに頭領が我慢できなくなって子供を攫ったからこそ、ついた痕跡かもしれない。
「でも頭領、逃げるったって、どこに……」
「……魔物の領域を抜けるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます