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「どうだ、見えるか?」


 力を手に入れるために、目の手術を行った。


「えっと……なんだか暗い気がします」


 右目だけで見る世界は暗く、人がボヤーっとした光のように見える。


「それが蛇の目だ。光や熱が、特徴的に見えるようになる」


 これで魔物化が済んだらしい。コートの男性がいうには、男はちょっとの手術で魔物化しやすいらしい。その後連れていかれたのは、魔物の祭壇と言われている場所、そこで精霊に願い祝福を受ける。


「どうだ、力を入れた気分は?」


 まだまだレベルが低いので、世界を滅ぼすことは無理だが、以前と比べ少し力がついた気がする。気のせいかもしれないが。


 彼は、約束を守って僕に力をくれた。連れていかれている時や手術中は、まるで僕を悪魔が地獄へ招いているような気持ちだった。だが今こうして生まれ変わり、真に信仰すべき精霊へと導いてくれた彼が、まるで彼が精霊の使いのような神聖なものにさえ見えてくる。


「みろ」


 連れていかれた先は柵に覆われ、中で田畑を耕している村の男性たちが見える。近くには小屋が二つあり、そちらへ案内される。中に入ると、村の女たちが縛られた状態で転がされていた。


「アルノー!」


 声をかけてきたのはハンナ。ハンナも他に漏れず縛られている。


肩に手を置かれる。


「さあアルノー。お前の望みはなんだ?」


「僕の、望み……」


「アルノー! お願い助けて!」


「見てみろアルノー。あれだけ馬鹿にしてきた村人が、今こうして君に縋るように目を向けている」


 周りを見渡す。幼馴染も、彼女の両親も、村の偉い人間も。今こうして、僕が何をするのか注目していた。


「さあ、ここにあるものは全て君のものだ。君の欲望のままに好きにするといい」


「ああ……」


「あ、アルノー!? お願い、正気に戻って!」


 運ばれている途中に擦り切れたのか、幼馴染の服から肌が少しだけ見える。ゴクリと僕は唾を飲み込んだ。

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