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「ついてこい。ゾネ、村人の対応は任せる」
「はい、お兄様!」
大人しく男性についていく。後ろでは村人がホッと息を吐いている声が聞こえた。遠くから村人たちが見える位置で止まる。
「少年、名前は?」
「え、あ、アルノーです」
「そうかアルノー。あれを見てみろ」
男性が、指さしたのは馬車に積まれていく村人たち。チラチラと、こちらを伺っているものもいる。その目はまるで、こちらを憐れんでいるような目だ。まるで僕が悪いことをしたように。悔しい、そんな目で僕を見ないでくれ。
「あいつらがやったことはなんだ? 折角救われた命だったのに、ああして救った人間に罵倒を浴びせてきた」
そうだ、あの人たちは自分が救われたことに感謝などしていなかった。
「ああして醜く生にしがみつく人間は愚かだと思わないか」
本当にそうだ。どうしてこう、人間は愚かなのだろうか。
「あんな人間、こんな村、こんな世界は滅びればいいのに」
そうだ、こんな村滅んで正解だ。あんな醜い人間が住む村なら滅んでしまえばいい。
「そうだ、世界にはこんな村が山ほどある。それを壊すことは、世界を綺麗にするという正義だと思わないか」
そうだ、こんな世界は壊してしまえばいいんだ。
「どうだ、世界を壊す力が欲しいか?」
俺には力がない。だから俺にも世界を滅ぼすための力が欲しい。
「なら俺についてこい、俺に従え。そうすれば世界を滅ぼす力も、自分の望みすらも全て叶えてやる」
自分の望み……
「あれをみてみろ、お前がさっき大事に守ろうとした女だ」
ああ、ハンナ……
「ああ、そうだ。もし力を手に入れてみろ。あの女は、お前のものだ。お前の好きなように扱えばいい。お前のその欲望を、全てあの女にぶつければいい」
ハンナが俺のもの……
「あの女だけではない。あの村にいる人間の、全てを奪ってやればいい。どうだ、力が欲しいか?」
「ああ僕は……力が欲しい」
こうして僕は、悪魔と契約を交わした。
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