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「はぁ、はぁ、はぁ……」
間に合った。何か幸運だったのか、分からない。でも今こうして倒れたゴブリンと無事だったハンナがいる。それだけでよかった。
「おい、そこの少年」
「え――」
後ろから声がかかる。振り向くと、声をかけてきたのは先ほどのコートの男性だった。
「なにか――」
「申し訳ございません!!!」
返事を返そうとしたタイミングで、隣から声が聞こえる。頭を地につけ謝っているのは、ハンナの両親だった。
「あなた様に害をなすつもりはありません! そこの少年、アルノーが勝手にやったことなんです! 何卒、我々の命だけは!」
「おばさん、なにを――」
「うるさい! そもそも私たちは、貴方に歯向かうつもりはありません! なんでも言うことを聞きますので、どうか命だけは!」
何を言ってるんだ……俺はあんたたちの命が危ないと思って助けに入ったんだぞ。それなのになんで……
「ははっ、少年。こちらの女性はそう言っているが、実際はどうなんだ?」
「ぼ、僕は……」
チラリとハンナたちの両親を見る。その目はまるで、こちらを恨んでいるかのような目。なんで、なんでだ。助けたのになんで、そんな目を向けられないといけないんだ……
「僕が……勝手にやりました……」
「ほう……」
黒いコートの男性を見上げる。その男性は、まるでこちらを品定めをしているような目だった。
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