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 人類最強の女をどうしたら戦場に引っ張り出すことができるのか。その作戦を立てることになった。


「戦力の増強?」


「ああ、手が回らないくらい戦場を引っ掻き回す必要がある」


 結局今は、部下が動くことで解決してしまっているため、社長が現場に出てこないのだ。なら、出てこないとまずい状況まで持ち込めばいい。


「それでゴブリンってお前さん、戦力として弱すぎやしねぇか?」


「いや、これでいいんだ」


 俺が今回注目したのは、ゴブリンの繁殖力だ。ゴブリンが、身体強化の魔法を使った人間に倒されるレベルなのに、今まで絶滅させられなかった理由は、やはり繁殖力が大きな要因になる。


 その繁殖力を生かして、戦力の数を揃える。数を集めることができれば暴力になる。


「たとえそんなに戦力を増やしても、食料とかどうするんじゃ」


「……」


 色々と考える課題は多そうだ。結局10匹のゴブリンを引き連れ、村を襲うことにした。


「おい。そこのお前」


「え――?」


 声をかけたのは純朴そうな、少し歳がいった男性。その男性を斬りつけて殺す。


「あ、きゃあああああ――あ」


 近くにいた、他の女性が声をあげる。そちらも煩いので斬りつける。その後もすれ違う人間を、片っ端から切り伏せていく。クソ、面倒くさいな。

 

「お兄様!」


 フェンリルとポチと一緒に、こちらに向かってくる妹。妹も妹で、大分コートが血に染まっていた。


「中央に全部集めておきました!」


 でかした妹よ。妹と一緒に中央に向かう。そこには数十人の男女が、ゴブリンに囲まれ怯えていた。近くには歯向かった人間の死骸が転がっており、その様子から恐怖で体が動かないのだろうと予測する。


「これで全部か?」


「はい! 恐らく」


 ゴブリンにとって、男性の人間は食量と経験値になり、女性の人間は苗床となる。これだけの数の人間がいれば、次はもう少し戦力を増やすことができそうだ。雑な作戦だったが結果に満足する。


「ママ! パパ!」


 ふと後ろからそんな声が聞こえ、その少女は中央にいる両親らしき人物と再会を喜びあっていた。続けて後ろから少年もやってくる。


「……まだいたのか」


 チラリと妹を見ると、えへへと言いながら頭をかいていた。今回は、出来れば村人全員を確保しておきたかった。少しでも逃がして情報が洩れ、俺たちが警戒されるのも困る。


 さて、この後こいつらを魔物の領域まで運ばないといけない。そのために、もう一度恐怖を植え付ける必要がある。再会を喜んでいるところ悪いのだが、遅れてきた少女には犠牲となってもらおう。


 ゴブリンに目を向ける。そのゴブリンは、10匹の中でもかなりブレーキが壊れており、早く人間を殺したいとヨダレを垂らしながら指示を待っていた。ちなみに言葉は通じないので、俺の勝手な予想だが。俺からの指示を受け、ゴブリンは更に笑みを深める。


 待ち望んでいた殺しができると分かり、その瞬間を最高に楽しもうとゴブリンがゆっくりと棍棒を振り上げる。


「あ、あああああああああ!」


 その瞬間、隣にいた少年がゴブリンに向かって走りだす。途中で剣を拾い、ゴブリンまで一直線で駆け出す。


「ほう……」


 少年と少女の関係は分からない。だけど、少年のその行動がとても輝いているように見えた。そしてこの感情はきっと利用できる、ゴブリン一体の命よりも重い。


 今まさに、振り下ろそうとしていたゴブリンの腕を斬る。両腕がなくなったゴブリンは、未だ自分に何が起きたのか理解できていない。そして少年の剣が間に合った。

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