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「おい、くれぐれも粗相のないように頼むぞ!」


 ドヴェルグのバーヴォールの先導で、俺は魔王城まで連れていかれた。こんなところに人間がいるのが珍しいのか、他の魔物からは好奇な目で見られている。魔王の領地は真ん中に城があり、周りに城下町が広がる領地だった。魔王城はいわゆるRPGなどで出てくる、石でできた城のような佇まいをしている。その見た目は、正に芸術。魔物の世界でも、こうした建物に関する感性があるのだろう。


 ドアを開くと中にはいきなりドラゴンがいた。パッと見でわかるが、あのドラゴンは今まで見てきた中で一番やばい。ドヴェルグが、膝をつき俯く。


「魔王様だ」


「人間、よく来たな。歓迎するぞ」


 そのドラゴンの鱗は赤く、サイズも今まで見てきたドラゴンの中で最大に大きかった。正面玄関を開けたらいきなり魔王がいたことにも驚いたが、この城はそのドラゴン専用のために作られた城だったのか。確かに人間の尺度で考えていたが、ドラゴンからすれば人間の城のように細かい部屋や、狭い廊下などいらないのだろう。


「こっちだ、ついてこい」


 ドラゴンの先導に従って、魔王城の中を歩く。歩く度に、ドシンドシンと大きな音が鳴っていた。歩く度に尻尾が右に左に揺れるので危ない。


「ここだ」


 案内された場所には、ドラゴンも通れそうな大きなドアがあった。この先に、炎の精霊がいるのだろうか。


「いけ」


 魔王の指示に従って、ドアをあけて中に入る。そこには、地下へ続く坂道があった。坂道を下りながら考える。今回なぜ、炎の精霊が会おうと思ってくれたのか分からない。だけど折角会えるこのチャンスを、逃すわけにはいかない。


 精霊の場所までは意外に遠く、数分その坂道を下っていくと、目的地が見えてきた。そこはとても熱く、奥にはグツグツとマグマがある。流石にそこまで近づけないので、途中で止まる。これだけ距離が離れていても汗が出てくる。


『やあ、人間の男。会えてうれしいよ』


 肌は赤黒く、炎を纏ったその存在は、まるで悪魔の羊。バフォメットのような精霊がそこにはいた。


ようやくたどり着いた。

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