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『行かないで欲しい』
その言葉を言えたらどんなに良かっただろうか。でも私にも夢があるように、きっと彼にも夢や目的がある。
そんな彼に、身勝手に首都には行かないでなんていうことは出来ない。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか分からないけど、そんな彼の言葉に私は怒ってしまった。
別に彼はそんなつもりで言っていない。ただアドバイスのつもりで言ったのだろう。分かっている。
でもこの気持ちを素直に伝えることが出来ない。
だから別の事で駄々をこねる。少しでも今の私の気持ちが伝わればいいのにと願いながら。
でも彼は、そんな私の言葉に大きな反応を示してくれなかった。
悔しい。私だけ寂しい気持ちになってることが悔しい。
悔しい。まるで完璧な時計を作ることが出来ないと言われているみたいで悔しい。
悔しい。彼を止めれる言葉を持っていない私自身が悔しい。
だから私はそれから意固地になって研究をする。
彼が旅立つまでに完璧な時計を作ってやるんだと。
コリンナは何も聞かずに手伝ってくれる。本当にありがたい。
睡眠も削って研究をする。
完成した時計は、やっぱり不完全なものだった。
(私には彼を止める権利がない……)
まるで天から、そういわれている気分だった。
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