91
学術都市を離れる。その前日は雨が降っていた。雨は別に嫌いではなかったが、最近はあまり気分が乗らないので、少しだけ憂鬱な気分になる。
傘を差し、玄関を出る。
雨が強い。
ふと、目の前に傘を差さずに立っている人物が見えた。
「……モニカ?」
その女性は最近、図書館に顔を出していなかったモニカだった。
「おい、傘もささずに何してるんだ」
急いで彼女のもとに向かい、自分が使っている傘を差しだし雨を防ぐ。
雨に濡れた髪が、彼女の頬に貼り付いている。
何時間立っていたのか、彼女の吐く息が白い。
数日寝ていないのか、目には隈があり具合が悪そうだ。
「ダメ……でした」
「え、なに?」
「すいません……どうしても完璧な時計を作ることができませんでした……」
「……とりあえず中に入ろうか」
濡れた状態で話すことでもないだろう。彼女の手を取り強引に引っ張る。
手は冷え切ってとても冷たかった。体を拭くものを私、暖炉に火をつける。暖炉近くに彼女を座らせる。
「それで……なにがあったんだ?」
彼女は下を向き、沈黙した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます