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 アカデミーは研究室ごとで部屋を分けられている。私が研究する『時計の小型化』には、私以外にも何名かメンバーがいる。


「ごめん、遅れちゃった」


 そう声をかけた相手が、同い年で同室のコリンナだ。コリンナは常に眠たそうな目をしている少女で、ウェーブのかかった長い髪が特徴だ。


「ううん、大丈夫」


 昨日は、つい飲み過ぎてしまって寝坊してしまった。


「というか起こしてよ」


「……気持ちよさそうに寝てたから」


 昨日は、久しぶりにヴルストとビールを飲んだので、気持ちよくなって熟睡してしまった。


 学術都市の学生は、国からの研究費のみで生活しているものが多く、何か作品を作り、売っている人間以外は基本お金がない。勿論1年(eins)の私もお金はない。


「……スンスン」


「な、なに?」


 コリンナが顔を近づけて匂いを嗅いでくる。


「遅刻したのにシャワーを浴びてきている」


「べ、別に身だしなみを整えるのは普通でしょ!」


「……普段と違う、怪しい」


「それよりもホラ! 早く研究を始めましょう!」


 こちらをジーっとみてくる彼女を無視して、自分の仕事を開始する。

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