第三章
64:第三章
指導を初めて数か月経った。
ヨーゼフもかなりガタイがよくなり、先日ついに100レベルを超えたそうだ。特に教えることも、もうないので後は自由にやってくれ。そう依頼主に伝えたら、待っていて欲しいと言われ部屋で待機している。
少し待っているとドアが開く、入ってくるのはナイスミドルの男性と、セバスチャンみたいな執事だ。
「やあ、初めまして」
「……はあ」
誰だ
「私はヨーゼフの父、マルクス・フォン・ミュラーだ」
まさかの本当の依頼主の方だった。
「どうも……」
確かに、心なしか顔立ちが似ている気がする。少し深い目元に高い鼻、イケメンの血は父親から受け継いだらしい。
「実は君にお願いがあってね、座って話そうか」
「……はい」
最近やけに貴族と話す機会が増えている気がする。そういえばヨーゼフも貴族だったっけ。
「まずはヨーゼフを鍛えてくれてありがとう。君のおかげでヨーゼフも大分自信がついたようだ、助かったよ」
「いえ、仕事でしたので」
「そこで君にもう1つお願いしたいことがあって、今回時間を貰っているんだ」
依頼主のマルクスは一枚の紙を執事から受け取り、こちらに出す。
「君には王都で行われる闘技大会に、是非出て欲しいと思っている」
闘技大会
年に一度行われるその大会は武力を競う大会だ。各部門に分かれ世界中の腕に自慢がある人間が集まり戦い合う。
正直に言おう。全然興味がない。
だけど最近学んだことだが貴族の命令に逆らうのは、なかなかの重罪らしい。理由もなく断ることはできない。
「理由をお伺いしても?」
「構わない、だけどここからは他言無用で頼むよ」
「……分かりました」
そんな秘密共有したくないが、今のところ断れる理由もないので聞くしかない。これが貴族のトークスキルか。
「この国の政治は女性が主な仕事を請け負っている。その理由が魔力操作が高くレベルが高いからだ。だが実際は君のように女性に比肩するくらい戦える者や、書類仕事だけなら女性より優れた男性は多くいる」
「はい……」
「しかしそんな男性は認められることがなく、女性が実権を握っている。私はそんな状況を打開したいと思っている。」
「それで闘技大会に?」
「ああ、闘技大会の優勝賞品の一つに現四芳姿との試合がある。そこで四芳姿の一人にでも勝つことができれば、世界は認めなくてはならない。男性の強さを」
つまり貴族の男性はこう言っている。世界中の猛者と戦い優勝し、更に世界最強の4人と戦って勝て、と。
「それは、無理ではないですか……」
先日会ったカサンドラぐらい強い女性って、もうどうやったら勝てるかなんて想像できない。
「勿論今のレベルでは到底無理だろう。少なくともLv500は必要だね」
俺の夢は、俺より弱い女性と結婚することなので、そんなにLvは必要ないんだが……
「君への依頼は2つ。まずは今言った闘技大会に出て優勝すること。もう1つはレベルを上げること」
「レベルをあげることはいいんですが、優勝は確約できません」
「ああ、今はそれでいい。早速だが君にはこれから魔物との最前線に向かって貰い、レベル上げをして欲しい。そして半年後にある闘技大会までにレベルをできるだけあげておいてくれ」
まだ依頼を受けるって言ってないんですが……
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