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彼は準備を怠らない。
魔物を討伐する前にこれだけ確認をする冒険者がいるだろうか。彼は入念に準備を行い今日の調子を確認する。一度風邪をひいていた時があり、それを準備の段階で指摘され、結局その日の魔物討伐が無くなった時があった。
勿論そういった日は報酬は支払われない。
それなのに彼は危険だからという理由だけで断った。冒険者としてあり得ない行動だろう。彼は今までもこうして狩りを行っていたからこそ、ここまで成長しているのかもしれない。
そして同時に彼の意識の高さも知れた。
そこまで考えて準備、行動をすれば彼に追いつけるのか。それは遠い道のりではあるが、決して届かない目標ではない、そう思っていた。
実際に魔物を狩る姿を見るまでは
彼はこの辺では強敵と言われているトロール相手に素手で挑む。
「は――?」
最初は、茫然のあまり言葉を失った。そして彼はトロールを軽々投げ飛ばし、討伐する。
「これをやって貰います」
無理!無理!無理!無理!無理!無理!
聞くところによると、彼はレベルが低いころからこうして倒していたそうだ。確かに強敵に挑むことでレベルが上がりやすいというのは聞いたことがあるが、装備や行動を縛って討伐するというのは聞いたことがない。
「せめて、武器を使って……」
「……分かりました」
彼には決して届かない。そう実感をした。
そう彼を認めたことによって、嫉妬心が少しだけ薄らいだ。彼は別に楽をしてここまで来たわけではない。当たり前だが男性がこの立場に立つのにはかなりの努力がいる。そして彼はそれだけの努力をしてきた。
「あら、怪我をしてますね。仕方ありません、ワタクシが治療してあげますわ」
「……いらん」
だけど僕の前でイチャイチャしないでくれ。
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