35

 それから何度か狩りに出向き、一度村に戻ってから、また街に出てきた。未だにレベルは上がらずどうしたものかと思っている。


(なんでレベルが上がらないんだ……)


 格上のトロールを倒しているのにレベルが上がらない。もしかして楽勝に倒し過ぎているせいか? もっと苦戦しないとダメか?

 でも正攻法で倒そうとすると大変そうなんだよなぁ。は~やだやだ。


 今日もトロールと対峙する。


 そういえば前に門前で貴族の女に使った技、あれは前世の記憶の柔道という技だった。もしあれを自在に操れるようになったら、かなり戦術の幅が広がる。


「ふむ……」


試してみるか、トロールで。そう思っていた時期もありました。




「う、おおおおおおおおおお」


 すんでのところで避ける。あぶね! そういえばこいつの攻撃は一撃必殺だった。最近のヌルゲーで忘れていた。

 攻撃で隙ができるところも変わっていない、よし腕を取って……ってこいつの腕太いわ!


「ぐっ! この!」


重い! でかい! なんとか背負い投げを繰り出す、おらぁ! どうじゃ!


 背中からもろに受けるトロール、受け身なんてない。これは大ダメージやろ!

 そのまま少し待つが起き上がってこない。よし一撃だ。


「うっ!」


来た、レベルアップ酔い!


「おろろろろろろ」


は? なんかいつもとちが――目の前がグワングワンする。この感覚1から2に上がった時と同じ感覚。まずい。


 木に寄りかかり体を支える。倒れたら起き上がれなさそうだ。はぁはぁと息を整える。落ち着け、胸ポケットに手を突っ込む。ここで取り出すは最近買った煙草だ。


シュッ ボッ フー


 息を整える。全然楽にならない。おい前世の知識、煙草に鎮静作用があるって言ってたのに無いじゃないか! 嘘つき!


 煙草を咥えたまま動きだす。とりあえず折角付け足し吸い切ろう。あとさすがに無理なので獲物は放って街へ戻ることにする。

 足を引きずりながら街へ引き返す。おっと煙草は携帯灰皿に捨てる。これは前世の知識だな。


「お、おい大丈夫か!」


やっと門まで辿り着いた。


「すまない、少し休ませてくれ……」


「分かった、誰か! 来てくれ!」


そこで意識を手放した。

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