ゲーセンと思い出

「せっかく、学校抜け出してまでゲーセンとは...私たちらしいね」

 遊ぶと言っても中々いい場所が思いつかなかった俺たちは無難に楽しめるであろうゲーセンに来ていた。

「だな。ってかあいつらと来た時以来じゃないか?」

 あいつらとは元カノたちのことであり、元カノと付き合う前はよくみんなでここのゲーセンに来ていた。

「あ~?陽大が絶妙に浮いてたやつね」

「...おい!お前たまに俺の負の記憶をフラッシュバックさせてくるよな...」

 忘れさせてくれ。。。というかください。お願いします。

「めんごめんご」

 そういうちさとの表情は学校の時に比べ少し柔らかくなっていた。

「それじゃ、まずは定番のあそこから行くか」

「だね」

 俺たちが向かったのは古き良き格ゲーコーナーに設置してある格ゲーの元祖であり王様のスト〇ート〇イターである。

 昔からゲーセン一発目はこれで身体を温めるというのが通例だ。

 年期を感じさせる機械に硬貨を投入する。

 すると本体から効果音が鳴った。

 この時のこれからゲームが始まるぞ!というワクワク感は何歳になっても消えない。

 ちなみに右隣の機種を使っているちさともどこか楽し気に口を弧にしている。

「よっしゃー!負けないぞ」

 ちさとの掛け声と共にゲームが開始した。

 俺は頭に赤いハチマキを身に着けている人気キャラでちさとは身体の大きさ程ある手裏剣をぶん投げるキャラだ。

「...負けた方はジュースおごりね」

「望むところだ」

 失恋して家で暇な時間をCS機版のスト〇ート〇イターを費やしてきた廃人の意地見せつけてやる。

「アタック!」

 ちさとの手裏剣が俺のキャラにヒットした。

 そのままコンボも決まり、HPの半分を持っていかれてしまった。

「...や、やるな」

「あれれのれ~?もっしかして調子悪いのかっな~?」

 ...こいつマジでイラつくな。

「ノックバック攻撃したって無駄だよ~ほんとにあれれ?恋にうつつをぬかして弱くなった~」

「言ってろよ」

 俺の攻撃によってちさとのキャラが画面の右端に吹っ飛ばされた。

 俺はこの好機を逃すまいとどんどんとコンボを決めていった。

「ぬ、抜け出せない」

 別に所謂ハメ技でもなければ、ズルでもないのだが腕が鈍って攻撃をさばききれないちさとにはかなり有効だったようだ。

「こ、これ知ってる!ハメ技ってやつでしょ!?...流石、陰キャ」

「ハメ技じゃないし、学校サボってる不良に言われたくないね!」

 じわじわとちさとのHPが減っていく。

「きゃー!陽大くんハメちゃらめ~~!」

「人聞きの悪い言い方するな!?」



「...悔しいけど、ほらおごり」

 あれから、UFOキャッチャーやらカラオケやら銃のコントローラーを使ってゾンビを倒す謎ゲームをやり終えた俺たちは近くの公園のベンチに腰かけていた。

「んで?本当に良い子の陽大くんはどうしちゃったのかな?もう、これ暫定悪い子だよ」

 ちさとはどこか申し訳なさそうに呟いた。

 夕日に照らされてるちさとはどこか哀愁が漂っていてまるでつい数週間前までの自分を見ているようだ。

「朝も言ったがなんかあったんだろ?」

「...ん、まあね」

 ちさとは歯切れが悪そうにモジモジしている。

「しかも、七海先輩に関係してるだろ」

「......」

「図星か」

「...どうしてわかったの?」

 ちさとは身体を震わし、視線を右往左往とさせながら呟いた。

「友達だし見てればわかるよ。ってか電車でも七海先輩とLINEしてる時、寝てるフリしてチラチラとみてきてただろ」

「...変な所で勘鋭いよね」

「何か悩んでることが合ったら言ってくれないか」

「...まあ、もう察しちゃってるよね」

 ちさとは夕焼けを見つめながらため息を吐いた。

「...まず、勘違いしないでほしいんだけど陽大のこと恋愛対象としては好きじゃないから」

「なんで俺今フラれたの!?」

「でも、状況的に私が陽大の事男の子として好きなんじゃって思ったでしょ?」

 確かに20%くらいの確率であるかもと少し覚悟は決めてきた。。。

「...やっぱり図星か。まあ、いいや。私さ怖いんだよね」

 ちさとは俺の瞳を見つめ呟いた。

「もし、陽大が七海先輩にぞっこんになったら一人になっちゃうなーって」

 ちさとは落ち着いてきたのか震えも止まっていた。

「そしたら、話せる人はいっぱい居ても孤独になっちゃう」

 俺はちさとになんて声を掛ければいいか分からなくてただ頷いた。

「...中学まではそうだったんだけど、今は本当にそれが怖いんだ。もっと色々冷めてると思ってたのに...」

「気分を悪くさせたら謝るがあいつらと一緒にいるのはダメだったのか」

 一人でいるのが嫌だったら俺なんかに固執するより、あいつらに依存してた方が気は楽だろう。

「...あんなのただの茶番だよ。泣けば誰かが助けてくれると思ってるような大人になりきれてない子供が傷の舐め合いをしてるだけ。あんなの友情ではないし、違う」

 結局、こいつも俺と同じような人間で...だからこそ友達になったのだろう。

 ならば、俺は七海先輩がしたように同志を助けなければいけない。

 これはちさとの為という免罪符で俺が七海先輩に対してある罪悪感を薄めようとしているだけかもしれない。

 でも、例えエゴイストになろうと俺はちさとの為に何かしたいと思ったことも事実だ。

 ならば。

「俺はこれが正解なのかわからない。もしかしたら、俺とお前が嫌うあの茶番のような気持ち悪い関係になるかもしれない。でも...」

 俺は右手を差し出した。

「...何?」

「握手だよ。握手。俺はお前を裏切らない...とは絶対はないから約束できないけど宣言はする」

「...そこは言い切ってよ」

 ちさとが手を握り返した来た。

 強く強く握ってくる。

 ちさとはまだ半信半疑と言った感じだが、それでも俺が微笑むと微笑み返した来た。

 今日、やっと本当の意味で友達になった気がした。

「...決めた」

 ちさとが少しいたずら気な表情をして呟いた。

「何をだ?」

「私、何が何でも陽大と七海先輩くっつける」

「なんでだよ!?」

 意味がわからない。

 それがいやだったからこうも拗れたんじゃないのか。

「よくよく考えたら、優しい優しい七海先輩と付き合ってるからこうやって今こうやって遊べてるんだよね」

「付き合ってないから、そりゃー俺の自由だろ」

「でも、これが束縛のやばい女だったら!?遊べなくなるじゃん」

 冗談だと思いたいがわりと本気そうなちさとに俺は戦慄したのだった。


『もう、少しでうちに着きます』

 ちさとと最寄り駅で別れた俺は電車内で七海先輩にLINEを送った。

 車内は時間帯からか人は朝取りは多いものの比較的少ない。

『可愛い女の子ともデートお疲れ様~』

『なんかトゲありませんか!?』

『別に~まあ、いいや...晩御飯楽しみにしといてね』

 この時の俺はまさか帰宅後も修羅場が待ってるとは思いもしないのだった。


 長くなってすみません。普段の2,3倍くらいになっちゃいました...

 あと、これで2章完結したっぽくなっちゃいましたがまだ2章60%くらいしか終わってないので明日以降もお付き合いください。。。

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