七海先輩と恋

 あれから私たちは寄り道することもなく真っ直ぐ帰宅した。

 こうして誰かと一緒に帰るのはやはりまだ慣れない。

「.....すぅー」

 陽大くんは疲れからか、家に着くなり寝てしまった。

「...もう」

 普段はしっかりとしているが、こうして口を半開きにしているのを見るとやはり年下なのだと実感する。

「ほら、毛布掛けないと」

 ...正直、最初は自分によく似た彼を救いたい一心だった。

 私が嫌う奴らにこれ以上良い思いをさせたくない。

 私が考えうる限り最悪の形で不幸せになってほしい。

 ただ、それだけだった。

「12時頃になったら一回起こすから布団に移動してね~」

 それに私に関わってくる大抵の人は下卑た目的で近寄ってくる場合が大半なのだ。

 彼とも深くは関わるつもりはなかった。

 でも、彼は違った。

 対等な友達として接してくれた。

 ......人生で初めてだった。

 今までの友達だって自分の不利益の為だったら、当然搾取してきたし親だってあくまでも私を育てる義務が合ったから優しくしてくれたという側面があるだろう。

 ...要するに私が言いたいのは自分の自由意思で本当の意味で優しくしてくれたのは彼が初めてだったという話だ。

「...ありがとね」

 彼の頬をつんつんと軽く突いてみる。

 みずみずしく少し硬い。

 やっぱり私のとは違う。

「...」

 彼は自分の顔をよく卑下しているが、私は彼の優しそうな顔が好きだ。

 ...も、勿論友達としてである。

「.......」

 まだ、21時30分だが住宅街と言うことも合ってか辺りからは一切何の音も聞こえてこない。

 しいて言うのならば、蛇口からポタポタと水の残りが垂れている音くらいだ。

 私も疲れていることも合っておかしなテンションになっているのか、ソファーで横になっている彼の唇に視線が吸い寄せられた。

 みずみずしそうで、生命力に溢れている林檎のように鮮やかな紅色をしている。

 何故か、どんどん私の唇と彼の唇の距離がどんどん近くなっていった。

 どんどんどんどんと進んでいき後もう少しという所でふと我に返った。

「....え?わわわ、私...今なにしようとしてたの...?」


 一章完結しました!

 明日から二章に入ります!

 ちさとやるなの出番が増えてより楽しめる内容になると思うのでお楽しみに!

 最後に一章完結という事で★やフォローをしてくださると嬉しいです...!

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