第3話 蜂と蛙は仲良くなれない
列車の
列車内の兵士が外からの襲撃を迎え撃とうとするが、どうにもならない。標的が小さすぎるのだ。昆虫ほどの大きさしかない飛行物体が、大量に突っ込んできて自爆していく。死体となった兵士達のマシンガンは宙に浮き、蜂によって空を飛んで新たな銃殺体を生み出していく。
かくして列車を護衛していた兵士は全滅した。横転した貨物列車の中には、まだホーネッツが居る。車両の
レーザーで四角形が描かれる。赤く焼けて
大量の蜂が列車の中に入って、その後、ホーネッツが隙間から浮き上がってきた。蜂が持ち上げているのだ。「ああ、自由だ」などと呑気に言っている、この男は
現在の位置はフロリダ半島に程近い場所で、線路一本だけが走る、だだっ
黒煙を上げるヘリの
「蜂だって、無限に居る訳じゃないんだ。無駄に
脱出に必要だったとは言え、かなりの機械蜂を使わせられた。自爆攻撃の結果、十万以上の数だった今回の列車襲撃に使われた蜂は今、
ちなみに機械蜂は、自己増殖を続けている。
「それもこれも、
ぶつぶつと
彼を目の
「非常識な奴が一番、怖いって事かね。特に恨みを買った覚えも無いんだが」
蜂の群れを周囲に飛ばしながら、存在自体が非常識な殺し屋は荒野を歩く。タクシーの一台も捕まりそうにないが、座りづめで少し歩きたかったので問題は無かった。その気になれば移動手段もあるのだ。と、前方に人影が見えた。
「よぉ、ホーネッツ。脱出、おめでとう」
スーツとシルクハットに身を包んだ、肥満体の男が陽気に呼びかけてくる。
「やぁ、フロッグ。
ホーネッツも調子を合わせて返す。二人の距離は二十ヤード以下で、西部劇なら撃ち合いが始まる場面だ。
「嬉しいぜ、こうして会えて。それなのにホーネッツ、お前は俺から逃げ出してばかりだ。
「冗談じゃないね。それより一杯、やらないか。リモートで遠距離からカメラ越しに見つめ合って酒を飲むんだ。きっと楽しいぜ」
「それこそ冗談じゃねぇ。お前は遠距離から蜂を飛ばしてくるんだろ。そうなる前に、俺がお前を殺すのが一番の
それこそ誤解だとホーネッツは思っている。彼は基本的に、金にならない殺しをやらない。この
「ホーネッツ。どうしても俺はお前を殺したくて、そしてお前が逃げ続けてる状況にウンザリしてるんだ。だから、お前が本気になる情報を教えてやろう。どうせ携帯も持ってないんだろ」
「ああ、警察に取り上げられたからな。何かニュースでもあるのかい」
「大ありさ、裏の情報だよ。さっき
「何だと……?」
「分からないのか。闇サイトが立ち上げた、バトルロイヤルの企画だよ。殺し屋十人を殺し合わせて、生き残った一人だけに賞金が支払われるんだ。それも史上最高額でな」
続けてフロッグは、賞金額を告げる。その額は昔、アメリカがウクライナを軍事支援した時の額よりも多かった。
「……ありえないだろ。そんな金をどうやって用意するんだ」
「知らねぇよ。ま、どうせ
まだホーネッツには、良く分からない。
「頭を使えよ。お前を施設で解剖しようとして、政府は失敗したんだろ。手に
「殺し屋の数が減れば、アメリカの治安も良くなるし、残った殺し屋を始末しやすくなる。そういう事か……」
「ああ。闇サイトで行われる死亡賭博は、何があっても必ず賞金が支払われる。今の時代は現金以外での支払いも容易だ。それが分かっていれば俺達、殺し屋には充分だろうよ。報酬さえ保証されれば、俺達は誰だろうが殺す。それが俺達、プロってもんさ。違うか?」
そうだ。全く、その通りだ。そうホーネッツは心の中で
「ホーネッツ。お前が列車を爆破して
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